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多文化的背景を背負う芸能者・治療者集団がもつ
<文化を越えるアイデンティティと象徴表現活動>
―― この現在の研究課題は、文化人類学(心理・象徴・医療・科学技術人類学)、
芸術社会学、 カルチュラル・スタディ等の境域にある。
初めは所謂理科系から出発して所謂文化系に変わっていき、結局、文化人類学を専攻。
現在は、文理両系が関係しうる人間科学を「文化の地平」中心に研究。
さて、IT革命は産業革命時に匹敵するくらい社会・文化・人間生活を大きく変えると目されて
いるが、 人間・社会・文化の係わりを研究する人間諸科学も大きく変化せざるをえまい。
G・ベイトソン(生物学、文化人類学、コニュニケーション病理学、動物行動学、
精神の生態学をまたがって調査・思索した脱領域的学者) に影響をうけてのち、
超域問題領域を扱う問題設定認識座標系と方法論を自分なりのかたち[比較文化関係論]で
うちたてたいと願うようになった。
20代半葉から、留学や調査や短期訪問等(東南アジア、豪州で調査、 また トロント大学客員
フェロウとして研究調査)で短期長期海外滞在し、異文化体験下での文化社会的相互作用に
関係した問題で原体験を積み、自文化の殻の溶き方を了解してゆく。
最近では、1998年3月に(超短期ではあったが)カナダ・マクギル大学医療社会科学部を訪問して
人類学者A・ヤング、L・カーマイヤー教授たちと交流したこと、
学会でB・グッド教授と数日接触できたこと、が強く印象に残っている。
今後の課題へのヒントをえただけでなく、彼らへの学問・研究のありかた、
それを支えるまことに幅広い人類文化への関心と教養のかたちに強く打たれたから。
以上のように、専門も含めて、現在までの知的基盤からして基本的には洋学派
(文化的には必ずしもそうでないが)。
このような自分のありかたを反省的に再検討する必要も自覚。
時間ができれば、福沢諭吉先生の著作等をじっくり読んでみたいと最近思うようになった。
専攻領域と研究課題
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社会文化的危機・変化・葛藤状況で、集合的象徴表現行動・関係意味コミュニケーションが
どのようなありかたを示すのかを比較的に研究すること。
それを通して、新しい研究理論・方法・思想パラダイム転換方向を示す
相互行為コミュニケーション理論を見出していくこと。
調査という認識方法(異文化理解・他者了解を実地調査にもとづいて行うための
調査・記述・分析方法論)の再検討。
資料の分析技法とその理論(儀礼や会話・言説の分析・記号学的分析・
事例等テキストデータベースからのソフト使用による質的分析技法、映像記録分析など)。
これらを背景とし、シャーマン医療儀礼および多文化社会状況下での少数民族系芸術家の
芸術芸能コミュニケーションを比較研究することが現在の課題。
その他
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本塾アートセンター所員(兼任)として芸術・芸能・医療文化(先端医療を含む)の
比較文化社会科学的研究および催事を手がけている。
徐々に、研究・着眼点・エピソードなどを載せてゆきたい。
最後になるが、現代という人文社会科学のパラダイム転換期にもとめられる新しい
人間科学的認識の模索もテーマである(ベイトソンの精神生態学を手掛かりとして、
また、転換期における対抗パラダイムの相互連関に注目――例えば
本源主義的文化人類学対カルチャル・スタディーズの関連等)。
一見課題が多様すぎるとみえるかも。
でも、よくつきあっていだだけると深層でのテーマは一貫している、と
見抜いていただけるのでは、と思う。
主要著書・論文
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【ベイトソン論】
ベイトソン(綾部編「文化人類学群像」アカデミア出版会、1985)
写真による実験的民族誌(現代思想、5月、10月号、1984)
リプセット著ベイトソン伝記(翻訳・近刊)
【儀礼・象徴論】
都市フィエスタとその変遷 (大阪大学人間科学部紀要、1984)
呪的医療とその変化 (年報人間科学、1986)、
共著「象徴人類学」(至文堂、1984)
儀礼におおわれた対人的相互作用 (現代社会学、特集「ゴッフマン」、1985)
文化人類学から文化記号論へ (数理科学264、1985)
部族・伝統社会の通過儀礼と現代社会への示唆 (青年心理59、1986)
バリの象徴と絵画の世界−伝統的カマサン様式と一九三〇年代以降の絵
(美術手帖、1986・9)
儀礼過程における反省作用再考・・儀礼をとらえる−分析概念の位置
(吉田・宮家編『コスモスと社会』慶応通信、1988)
共著『二十世紀思想辞典(改訂新版)』 (三省堂、1997)
J.ブーン著レヴィ=ストロース論 (産業図書『グラドセオリーの復権』1988翻訳)
異界の体験と癒しの儀礼、『イマーゴ』 (青土社、Vol 1-8,
1991)
言説と実践のはざまにあらわれる身体をめぐって−
ジェンダー、ダンス、身体化にかかわる儀礼の考察から、
『儀礼とパフォーマンス【岩波講座・文化人類学・第9巻】』 (岩波書店、1997)
交錯する<エスノ芸術> (慶應義塾大学アートセンター年報 5.1998)
関係のなかで紡がれる文化の新局面
宮家準編『民俗宗教の地平』 (春秋社、1999)など