EU 砂糖部門政策改革に最終合意 最貧途上国の砂糖産業に破滅的影響

農業情報研究所(WAPIC)

06.2.22

 EU農相理事会が20日、EU砂糖部門政策の改革案を最終的に承認した。砂糖部門政策は、共通農業政策(CAP)発足以来、40年にわたりほとんど不変に留まってきた唯一のCAPの一分野だ。欧州委員会がEU農業の競争力を増し、市場指向的にし、WTOにおけるEUの立場を強化すると主張して推し進めてきた1992年以来のCAP改革が、遂に一応の完成を見ることになる。7月1日に発効するこの改革の中心的柱は、世界価格の3倍と言われるEUの砂糖価格を引き下げるために最低保証価格を36%引き下げるとともに、これによる生産者の損害を補償、また競争力のない生産者が生産を放棄するのを奨励することだ。

 2708th Aricultural and Fisheries Council meeting - Brussels, 20.02.2006 (provisional version)

 EU域内地域の社会・経済に相応の貢献をしてきた多くの生産者が耕作放棄に追い込まれるだろう。それだけではない。古色蒼然たるEU砂糖制度をWTOに訴え、勝利を勝ち取った一部の相対的に豊かな途上国や輸出国ータイ、ブラジル、オーストラリアなどーは利益を受けるが、高い価格でのEUへの輸出を保証されてきた最品途上国ー主としてアフリカ・カリブ・太平洋(ACP)諸国ーの多くの生産者や砂糖工場が閉鎖に追い込まれる。EUは、2009年から、49の最品途上国からの砂糖輸入を完全自由化する。それでも、生産条件が圧倒的に有利な砂糖大生産・輸出国に対抗することは不可能だ。

 欧州委員会によれば、この改革により、EUの砂糖生産は6-700万トン減少する。しかし、EUの生産とACP諸国・最貧途上国からの輸入で国内需要は満たされ、供給レベルは持続可能なレベルに落ち着くという。輸出は劇的に減少、WTOの約束も果たすことができる。価格引下げが引き起こす農家の所得損失は直接支払で補償されるから、条件が有利な地域での砂糖生産は続く。直接支払は厳格な環境・土地管理基準の順守を条件とする単一農場支払に統合される。しかし、競争力のない地域では、財政的刺激により砂糖工場の閉鎖、他の用途への転換を促す。農家は他の生産への転換を促される。生産が半分以下に減るか、完全に放棄する国には追加援助が用意されている。この改革への適応が難しい途上国も、近代化、調整、多角化を助ける財政援助の恩恵に浴することができる。

 http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/06/194&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

 しかし、例えば、ACPの全輸出の30%の輸出シェアをもち、この改革の影響が最も深刻なモーリシャスは、このような援助で影響を和らげることはとてもできないと主張する。欧州委員会は今年、モーリシャスの砂糖部門リストラのために585万€の財政支援を計画している。しかし、モーリシャス政府は、砂糖部門リストラには250億モーリシャスルピー(約7億€)が必要で、その上、職の創出のためには他部門への投資も必要だと言う。

 EU Sugar Reform: Mauritius is Hoping Against Hope for Compensation,L'Express (Port Louis) via allafrica.com,06.2.14
  http://allafrica.com/stories/200602140393.html

  改革に伴う財政補償は決定的に不十分だ。これはすべてのACP諸国の共通の立場である。

 ACP Countries: Relentless Lobby to Minimize The Drop in Sugar Prices,L'Express,05.10.4
 http://www.lexpress.mu/display_search_result.php?news_id=51464

 ACP諸国は、砂糖はACPブロックの生命を意味する、香港WTO閣僚会合で最大限の注目を勝ち取るために、砂糖問題を各国のミレニアム開発目標の一環に含めるbへきだとも主張してきた。