感染確認の可能性が非常に高い米国のBSE陽性牛

農業情報研究所(WAPIC)

04.11.20

 各紙が既に報じているように、米国農務省(USDA)は18日、1頭の牛がスクリーニング検査でBSE陽性となったと発表した(Statement by Andrea Morgan Associate Deputy Administrator Animal and Plant Health Inspection Service U.S. Department of Agriculture)。免疫組織化学的的方法による画定診断には4日から7日かかるという。6月末に陽性となった2例は感染なしの確定診断が出ており、USDAはBSEと確認される可能性がどれほどあるかについては口を閉ざしている。だが、もちろん予断はできないが、今回も過去同様の結果となる可能性は非常に小さいだろう。

 米国がスクリーニング検査に使っているのはバイオ・ラッド社のエライザ法検査であり、感度は非常に高いけれども、検査サンプルの採り方が僅かでも適切さを欠けば発見されるはずの感染が見逃される恐れがあるばかりでなく、擬陽性が出る確率も高い。6月末の2例はその都度市場を振り回すことになったから、USDAも日本やヨーロッパと同様、最初に陽性と出たケースは再検査、それでも陽性となった場合に公表するように手続を改めた(米国農務省、BSE検査手続変更 スクリーニング検査陽性は二重検査後に発表,04.8.5)。従って、今回のケースは2回のスクリーニング検査で陽性と確認されたものだ。バイオ・ラッド社検査で擬似陽性が出る確率は1000分の1だが、再検査をすれば、これは10万分の1にまで減ると言われている(米国BSE:一次検査陽性第1号はシロと確認、だが第2号発見、擬似陽性はどれほど出るのか,04.7.1)。今回も擬陽性の可能性はゼロとは言えないが、検査サンプルが適切に採られてさえいれば、その確率は極めて小さい。

 ロイター通信の情報によると、専門家もBSEが確認される可能性が高いと見ているようだ(New mad cow case likely, experts say,Reuters,11.19)。バイオ・ラッド社副会長のブラッド・クラッチフィールド氏は、2度の陽性の結果が出た場合の擬陽性の確率は24万分の1と言う。これが正しいとすれば、これまでに検査したのが11万3000頭余り、擬陽性が1例出れば米国の検査能力に疑いが出かねない。

 最終的にクロとなった場合だが、これで米国のBSE発生率は極めて低いと推定できないことにも注意せねばならない。これまで検査した牛はどのような牛だったのか、年齢構成さえ明らかにされていない。24ヵ月以上、あるいは30ヵ月以上の高リスク牛(死亡牛、神経症症状を呈する牛・緊急屠殺牛等)の全頭検査なら信頼度は高いが、農家が棄てた牛を拾ってきたり、レンダリングに出される牛をを捕まえての検査では、何頭検査しても信頼できるBSE発生率は把握できない。