米国北部に高度のBSE暴露リスク、米国農務省報告

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.9

 米国農務省(USDA)動植物衛生検査局(APHIS)が4月29日、北米で確認されたBSEの4つのケースに関するカナダの疫学調査の検証結果を発表した。この4つのケースには、米国で確認された1ケースも含まれる。調査チームはカナダを訪れ、これらのケースの関連の可能性を評価、米国における高リスク動物の存在の可能性、あるいは汚染飼料への暴露の可能性も評価した(http://www.aphis.usda.gov/lpa/issues/bse/bse_epi_report_4-29-05.doc)。

 調査チームは、4つのケースが共通の感染源−汚染飼料−を持つ可能性を認めた。これは確定的結論ではないが、3つのケースの関連性を否定するのは困難で、他の1ケースも多分同じ汚染飼料が感染源であろうと推定した。4つのケースは、生まれて間もなく、カナダのフィードバンの前か直後に感染牛の組織に汚染された飼料を食べた結果の感染だろうという。

 現在米国に高リスク牛が存在するかどうかの評価に関しては、次のようなデータが示された。

 高リスク牛の第一のグループは、4つのケースと同一の出生コーホート(各ケースの前後1年以内に生まれた牛)の牛であるが、このグループの牛は当初859頭が確認されたが、後に6頭が除外された。11頭はトレース不能とみなされ、4頭はカナダで未だ生きており、カナダ食品検査局(CFIA)の監視下に置かれている。809頭は死亡したか、と殺され、29頭は米国に入ったと思われ、そのうちの18頭(約62%)が最終的に確認され、淘汰されるか、と殺が確認された。

 高リスク牛の第二のグループと考えられるのはカナダから輸入された繁殖牛であるが、94年から98年の間におよそ4万頭がカナダ・アルバータ地域(これらすべてのケースの出生地)から米国に輸入された。うち、18000頭が97年から98年の間に輸入された。しかし、正常な加齢または自然減により、大多数は米国牛群から排除されたと推定される。米国牛の年齢分布モデルは、これらうちの3%だけが現時点の米国で生き残っていることを示唆するという。

 カナダからの肉骨粉の輸入については、アルバータのレンダリング業者からの反芻動物起原と疑われる肉骨粉の輸入が調査された。輸入業者の調査では、これは反芻動物飼料に加工されなかったと結論され、大部分はアジアに直接輸出され、残りは鶏飼料に加えられたという。

 こうしたことから、調査チームは、カナダに近い米国北部地域、特にワシントン州・アイダホ州・モンタナ州はBSEに暴露された高度のリスクがあると考えることができると言う。この地域は伝統的にカナダ西部から多数の牛を輸入してきたし、高リスクの肉骨粉の一部も受け入れてきた。それにもかかわらず、米国のフィードバン(反芻動物に大部分の哺乳動物由来の蛋白質を与えることの97年8月以来の禁止)やその他のリスク軽減策により、BSE病原体の伝達または増殖のリスクは最小限に抑えられたと結論する。

 しかし、これらの事実は、もしフィードバンが「有効」でないとしたら(交叉汚染−豚・鶏飼料や古くなれば飼料にも加工されるペットフードには特定危険部位入りの肉骨粉の利用が未だに許されている)、北部だけでなく、全米(そしてカナダ)へのBSE拡散の可能性も示唆している。その上、アジアへのBSE拡散の可能性も。