EU OIE/BSE基準に関する立場を発表 骨なし肉無条件物品化を条件つき支持

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.25

 EUが24日、間近に迫った第73回OIE総会における動物保健基準に関するEUの立場を示す文書を発表した(http://europa.eu.int/comm/food/international/organisations/ah_pcad_oie17_en.pdf)。わが国で議論が沸騰しているBSE基準に関する立場も含まれる。無条件貿易物品に脱骨骨格筋肉を追加することは、30ヵ月以下の牛からのものに限り、条件付きで認めている。脳・脊髄など特定危険部位(SRM)を30ヵ月以上の牛からのものに限る変更については当面は認めず、消化管SRMを回腸遠位部に限ることには反対、腸全体をSRMとすることを強く主張している。また、リスク評価、BSEステータス決定条件、貿易条件などの厳格化のための具体的提案や勧告、サーベイランス基準に関する独自の提案が見られる。以下、主要な論点を紹介する。

1.無条件貿易物品。

 輸出国のBSEステータスにかかわらず、と殺に先立ち圧搾空気またはガスを頭蓋の穴に注入する装置によるスタンニングまたはピッシングを受けていない牛からの脱骨骨格筋肉(機械的分離肉を除く)は無条件に貿易できるとする点については支持するが、一定の条件(と殺及び脱骨の間の交叉汚染の回避)の下でのみとする。また、脱骨骨なし牛肉の定義を明確にすべきである。これに関しは次の文言を提案する。(原案にゴチック部分を追加)

 「と殺に先立ち圧搾空気またはガスを頭蓋の穴に注入する装置によるスタンニングまたはピッシングを受けておらず、と殺の過程が良好な衛生条件の下で行われ、と殺と脱骨の間に第13条に掲げられる組織(SRM)とのいかなる交叉汚染も回避するために必要な手段が取られた30ヵ月以下の牛からの脱骨骨格筋肉(機械的分離肉を除く)。肉が由来する動物の年齢を認証するための獣医当局が設置されていなければならない。」

2.リスク評価。

 原案がリスク評価の結果は年々も見直されるとする点について、これは達成困難と言う。

 また、リスク評価は国際専門家委員会により行われるべきと勧告する。

1)侵入リスクの評価が考慮すべき事項について。

 原案が、@)国またはゾーン/コンパートメントに動物の伝達性海綿状脳症(TSE)病源体の存在または不在、もし存在するならばサーベイランスの結果に基づくその発生率、B)輸入された肉骨分または獣脂かす、C)輸入された生きた動物、D)輸入された動物飼料と飼料成分、E)第13条に掲げられる組織(SRM)を含む可能性があり、また牛に給餌された可能性がある人間消費用の反芻動物起原の輸入製品、を掲げるのに対し、

 国内地域間の動物やその他の汚染された可能性のある商品の流れを評価するのは重要と認めるが、「輸入された」という言葉は不明確だから、国内の他の地域からの「交易」または「移動」の言葉を追加すべきであると言う。また、E)には「国産反芻動物起原の製品」を加えるべきと言う。

2)暴露リスクの評価について。

 リスク評価に最も重要なリスク軽減措置であるフィードバンを含めることは強く支持すると言う。そして、評価は、飼料成分としての原料物質、生産チェーン全体の内部での交叉汚染、執行(監察、検査、措置が設けられた期間)などの様々な要因を考慮すべきと言う。

 さらに、原案が考慮要因として掲げる「反芻動物の屠体(死亡牛からのものを含む)、副産物、屠畜廃棄物の利用、レンダリング過程のパラメーター、動物飼料製造方法」については、国またはコンパートメントにおける死亡家畜の収集のためのシステムを評価することは非常に重要だとして、「反芻動物の屠体(死亡家畜及び死亡家畜を収集するためのシステムを含む)の利用と処分」の文言を入れるように提案する。

 リスク評価にサーベイランスを含めることは支持する。

3.リスクステータスの決定の条件。

「商品特定リスク軽減措置なしで無視できるBSEリスク」のステータス(カテゴリーT)の決定の条件について、原案が、「BSEのケースが無かったか、いかなるBSEのケースも輸入されず、また完全に廃棄処分されたことを立証した、そして、@)第2条の2)から4)までの基準(獣医等関係者の啓蒙プログラム、疑わしい牛を発見した場合の通報義務、脳やその他の組織の承認された試験所での検査)が最低7年間満たされ、かつ、A)適切なレベルの監督と監査を通して反芻動物由来の肉骨粉か獣脂かすが最低8年間反芻動物に給餌されなかったことを立証した」とする点について、

 フィードバン実施に関するEUの経験は、「交叉汚染」のリスクを明瞭に示しており、フィードバンの管理と監査も交叉汚染のリスクに含めるべきであると言う。

 また、輸入雌牛にかかわる状況からして、この条件には、「B)すべてBSEのケースととともに、発症前後2年以内に生まれた雌のケースのすべての子が、またもし国・ゾーン/コンパートメントの内部で生きていれば、恒久的に識別され、その移動がコントロールされ、と殺されるか死んだときには完全に廃棄されている」ことを新たに加えるように提案する。

 この条件は、「商品特定的リスク軽減措置があれば無視できるBSEリスク」のステータス(カテゴリーU)の条件にも追加するように提案している。

 また、国産牛のケースが報告された国がカテゴリーUに分類される条件として、原案は、「第2条の2)から4)までの基準が満たされ、適切なレベルの監督と監査を通して反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすが反芻動物に給餌されなかったことを実証できるが、少なくとも次の二つの条件の一つが適用される」として、この二つの条件を「@)第2条の2)から4)までの基準が7年間満たされていない」、「A)8年間、反芻動物への反芻動物からの肉骨粉または獣脂かすの給餌に対するコントロールがあったことが実証できない」こととしているが、EUはそれでは甘すぎると見る。

 この二つの条件を削除、国産牛のケースが報告されたことがある場合には、「第2条の2)から4)までの基準が満たされ、適切なレベルの監督と監査を通して反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすの反芻動物への給餌の禁止が有効に執行されていることが立証できる」とするように提案する。

4.カテゴリーUの国からの輸入条件。

1)原案では、カテゴリーUの国またはゾーン/コンパートメントから輸入する際に、「国産のBSEのケースがある国またはゾーン/コンパートメントの場合には、輸出のため選別される牛が反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすの反芻動物への給餌の禁止が有効に執行されて以後に生まれたものであること」を証明する国際獣医証明書の提出を求めるべきであるとしているが、

 「国産のBSEのケース」という表現は誤解につながるとして、「国またはゾーン/コンパートメントの場合には、輸出のため選別される牛がBSEリスクが無視できると見なされるとき以後に生まれた」と修正するように提案している。

2)原案では、牛肉や牛肉製品が、「30ヵ月以上の牛の頭蓋と脊柱からの機械的分離肉を含まない」としているが、この禁止はすべての牛の骨に拡張されるべきであるとして、「全年齢のすべての骨からの機械的分離肉」とするように提案している。

5.ステータス不明(カテゴリーV)の国からの輸入。

 原案は様々な条件をつけて生鮮肉と肉製品の輸入を認めているが、EUは、これらの国のリスクは不明であることを考慮して、貿易は無条件物品(第1条の1)に限るべきだと提案する。

6.SRMについて。

 カテゴリーU、Vの国またはゾーン/コンパートメントの腸部のSRMを回腸遠位部に限定する原案に対し強く反対、腸全体をSRMとすべきと主張している。

 それ以外のSRMについては、カテゴリーUの国またはゾーン/コンパートメントのSRMを30ヵ月以上の牛の脳、脊髄、頭蓋、脊柱に限定する原案に対し、年齢区分の変更は、定量的リスク評価の結果や科学的知見の進歩に基づいて欧州食品安全庁(EFSA)が結論を得るまで保留すると言う。

7.サーベイランス基準。

 OIEとEU基準研究所が開発したBSurvモデルに基づくサーベイランスに基づくOIEの修正作業は歓迎する。しかし、提案された成牛100万頭に1頭のケースを発見するためのサーベイランスのデザインは野心的にすぎる、これは牛の数が少ない国については明白だとして、各国が10万頭に1頭を発見するための一つのデザインを持つように提案する。

 BSEの有無にかかわらず同じ基準は適用できないことは認めるが、リスク軽減措置なしでBSEリスクが無視できる国におけるサーベイランス活動をBSEと両立できる症候を示す動物の検査に限定するという提案(Bタイプのパッシブ・サーベイランス)には反対する。いかなるサーベイランス活動も、「少なくとも様々なリスク動物、すなわち疑わしいと診断される家畜、死亡家畜、緊急と殺動物または生前監査で監察された動物」を含むべきであり、これらの動物の多くがBSEと両立する症候を認められないことがしばしばあるから、この標的グループはいかなるサーベイランスにも含めるべきだと言う。

 採取されたサンプルに配分された点数については、様々な国のデータに基づく平均値を簡易BSurvモデルを使って決めたもので、ある国が配分された点数は国内の知見に対応しないことを示すことができれば、自身のデータを利用する完全BSurvモデルの適用を許されるべきだと言う 

 牛集団の構造と変化を考慮に入れた適切なサーベイランス・プログラムをデザインするために必要になる指針を加盟国に提供するために、OIEは疫学分野での基準試験所を設立すべきとも言う。

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