欧州食品安全庁、中枢神経組織SRMを除去すべき牛の年齢引き上げに慎重意見

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.27

 欧州食品安全庁(EFSA)が25日、特定危険部位(SRM)として除去すべき一定の牛組織の年齢限界に関する意見を発表した(http://www.efsa.eu.int/science/biohaz/biohaz_opinions/938/biohaz_opinion_ej220_srmremove_en1.pdf)。欧州委員会の諮問に答えるもので、欧州委員会は、国際獣疫事務局(OIE)専門家グループの協議と追加情報を考慮に入れて以前の科学運営委員会(SSC)の意見を見直す作業を要請していた。その結果は、目下開催中のOIE年次総会でのBSE基準見直しの議論に反映されるだろうが、中枢神経組織SRM(特定危険部位)を除去すべき牛の年齢の30ヵ月以上への引き上げには慎重だ。

 これに答えるために、EFSFは、進行中の実験病因論研究と投与量/潜伏期間の研究の利用可能なデータ、及び感染年齢と診断やアクティブ・サーベイランスにより病気が発見される年齢に関するBSE疫学の知見に基づき、SRMとして排除すべき年齢の評価を行ったという。

 OIEの見直しで除去すべき牛の年齢を30ヵ月以上に引き上げることが提案されている中枢神経組織(CNS)に関しては、病因論研究に基づき、異常プリオン蛋白質は潜伏期間の4分の3の期間で検出される可能性が高く、従って感染性が検出される可能性が高いと仮定することができると言う(ただし、異常プリオン蛋白質検出が可能になる時期と投与量・感染年齢に関連した潜伏期間の関係は未だ不明確と断る)。

 このように仮定した上で、病因論研究で見られる発症の最も早い時期に基づき、また潜伏期間の最後の4分の1で感染性が確認されると仮定すると、感染性は最も早くて26ヵ月で確認されると仮定せねばならない。しかし、これは、消化管を通してのみのBSE病源体の取り込みを反映するもので、口腔粘膜や神経を通しての取り込みのモデルも完全には排除できず、この場合には、理論的には潜伏期間が大きく短縮されるかもしれないと言う(ただし、現在、これを支持する観察データはないと断る)。

 その上で、疫学データを分析すると、2001−2004年にEUで報告されたBSE陽性のケースの平均年齢は86ヵ月から108ヵ月に上昇した。有効なコントロールがその最もありそうな原因である。さらに、報告された35ヵ月以下のケースは、6520のBSEのケース(検査された総頭数は検査された4100万に近い)のうちの4ケースだけである。EUにおけるBSEのケースの最小年齢は、2001年には28ヵ月と29ヵ月(2頭)、2002年には32ヵ月と34ヵ月、2003年には36ヵ月、2004年には42ヵ月である。感染性が潜伏期間の4分の3で現れると仮定するときには、除去年齢を30ヵ月以上に引き上げると、このような若い牛はカバーできない。21ヵ月以上とすれば、最も若いケース(28ヵ月)もカバーできる。

 従って、非常に若いケースを考慮に入れなければ、また農場で発見されたBSEのケースの平均年齢を指標とするならば、30ヵ月以上への引き上げは考えられないこともないが、検出可能な感染性に関する絶対安全のマージンはない。最も適切なアプローチは数理的モデル開発を行うことだが、これは(なお国によりバラツキがある不完全な)個々の国のデータの利用可能性にかかっていると言う。

 扁桃と腸に関しては、除去すべき年齢を引き上げるべき科学的根拠はないとしている。

 意見は、中枢神経組織SRMの除去年齢引き上げについて結論を出すの時期尚早を見ているようだ。「取り組む必要がある中心問題は、様々な年齢グループの感染牛由来のSRMの感染性の尤度(likelihood)である。感染性の尤度の推定には経験的及び疫学的データのさらなるアセスメントによる数理的モデル開発が必要である」、「SRMの年齢関連リスクの評価に際しては、年齢分布を含むSRMに関する定量的リスク評価の完成が価値ある追加要素となる」と勧告、結論を先送りしている。