ブラジル・サンパウロ州 エタノール工場新設許可を停止 産業拡大の環境影響評価へ

農業情報研究所(WAPIC)

08.5.17

  ブラジル・サンパウロ州が、エタノール工場の新設・拡張の許可を120日間停止する。変化する環境規制に適合するように許可手続を見直すためという。

 環境省エタノール・プロジェクトのマネージャーは、「新たな許可の申請が集中しているが、新たなルールの影響を評価することなしには新規の許可はしない」と言う。州環境省は5月16日付け官報で、国の砂糖とエタノールのおよそ60%を生産する州における工場数の増大は、新たな工場の適格性審査の改善を要請すると述べる。

 120日の新規許可停止期間に、エタノール産業拡大の大気、水、土壌、森林への影響を評価するということだ。

 Brazil State Suspends Licenses For Ethanol Mills Report,Cattle Network,5.16
 http://www.cattlenetwork.com/Content.asp?ContentID=222371

 Brazil's Sao Paulo State Halts Permits for Sugar, Ethanol Mills,Bloomberg,5.16
 http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601086&sid=aGkl.9wCrEPM&refer=news

 ブラジル・ルラ大統領は、ブラジルのサトウキビ・エタノールの環境・森林への影響はないと一貫して主張してきたが、一体何が起きたのだろうか。16日には、EUとラテンアメリカ・カリブ(LAC)諸国の戦略的パートナーシップを強化しようとするEU-LACリマサミットが始まったが、あるいはこれを意識したものか。

 ドイツ・メルケル首相は、このサミットへの参加を主目的とする1週間のラテンアメリカ巡回の旅の初日(14日)、ブラジリアでの記者会見で、バイオ燃料は古典的な化石燃料ベースのエネルギー源に代わる方法だが、それはバイオ燃料が持続可能な方法で生産される場合にのみだ、バイオ燃料の生産過程で雨林保護を確保する必要があると強調した。メルケル首相のブラジル訪問の中心目的は、再生可能なエネルギーに関するブラジルとの協力関係を築くことにある。しかし、そのためには、先ずはサトウキビ・エタノールの”持続可能性”への疑念を取り払わねばならないということであろう。

 EUは、ブラジルがEUにエタノールを輸出したければ、環境基準を満たさねばならないとしてきた。これに対し、ブラジル政府は、サトウキビ・エタノールは森林破壊と無関係だ、環境を口実とする貿易障壁を立てようとするものと抗議してきた。

  サトウキビ畑がアマゾン森林を大々的に侵略しているという証拠は確かにない。しかし、環境団体は、サトウキビ生産が大豆生産と牧畜への圧力となり、これらを森林地域に追い込んでいると証言してきた(→)。

 Merkel Calls on Brazil to Make Biofuel Production Sustainable,DW-world,5.14
  http://www.dw-world.de/dw/article/0,2144,3335974,00.html 

 ルラ大統領の執拗な主張にもかかわらず、サトウキビ・エタノールの持続可能性への国際社会の疑念は晴れていない。最大生産州は、サミットを機に、こうした疑念の一掃に取り掛かったのだろうか。