バイオ燃料は森林破壊を煽る 熱帯地域衛星画像が語る

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.15

  スタンフォード大学の”環境のための森林研究所”(Stanford's Woods Institute for the Environment)の研究者・Holly Gibbsが、ランダムに選定した100以上の熱帯地域特定サイトの1980年、1990年、2000年の衛星画像を比較、農作物栽培用地が拡大したのかどうか、もし拡大したとすれば、それは何に置き換わったのかを初めて明らかにした。この研究成果は、2月14日にシカゴで開かれたAmerican Association for the Advancement of Science(AAAS)の年次大会で発表されたという。

 Biofuels Boom Could Fuel Rainforest Destruction, Researcher Warns,ScienceDaily2.14
 http://www.sciencedaily.com/releases/2009/02/090214162758.htm

 彼女はFAOやその他の機関からの600以上の衛星画像を検討した。その結果、1980年代と1990年代に熱帯地域で拡大した新たな作物地の大部分が森林の開拓で生み出されたものであることがはっきりした。「従って、作物地の拡大は、燃料のためであれ、飼料のためであれ、食料のためであれ、一層の森林破壊につながることは疑いなく、このトレンドが続くだろうという証拠は積み重なっている」。

 例えば、1980年と2000年の間にできた新たな作物地の半分以上は手つかずの雨林からきたもので、別の30%は人手の入った森林からきたものだった。彼女は、一部のバイオ燃料唱道者が言っているのとは反対のことが起きていると言う。

 「これは、地球環境にとって重大な問題だ。我々はバイオ燃料が気候変動を減らす助けになると期待しているが、バイオ燃料作物地拡大の途上に横たわる雨林やサバンナのことを考えねばならない」。

 彼女は、バイオ燃料の規制された使用には反対しないが、バイオ燃料生産拡大は多くの予期しない結果を伴う恐れがある、「新たな[米国]政府は、雨林に貯えられた炭素の保護とともに化石燃料からの炭素排出の削減を確実にするために、エネルギー計画のあらゆる結果を慎重に見極めるべきだ」と警告する。

 ブラジルの大豆畑やインドネシアのオイルパーム・プランテーションの拡大が原生雨林を犠牲にしているという証拠は山ほどある。バイオ燃料がこのような土地から生産されれば、それは却って気候変動を助長すると批判されてきたし、それを確認する科学的研究も積み重なっている。

 しかし、新たな作物地を作るために開拓されるのがどんなタイプの土地―原生林、二次林、草地、プランテーション、農地ーなのかを定量する試みはこれが初めてだ。バイオ燃料の生産と利用は原料作物用地の拡大なしには進まない。熱帯におけるこの拡大のほとんどが雨林の破壊からくるほかないことが明らかになった。バイオ燃料事業者は、わが方は森林破壊はしていないなどと、いい加減な言い訳はできなくなる。