バイオ電気車 バイオ燃料車をはるかに凌ぐ土地利用効率と温室効果ガス削減

 農業情報研究所(WAPIC)

09.5.8

  米国研究チームが、バイオマスを燃やして生産される電気で走る車(”バイオ電気自動車”とでもいうのだろうか)はバイオエタノールで走る車よりも、同量の作物でずっと遠くまで走ることができ、温室効果ガスの排出もずっと少ないという新たな研究を発表した。

 J. E. Campbell et al.,Greater Transportation Energy and GHG Offsets from Bioelectricity Than Ethanol, Science DOI: 10.1126/science.1168885:Abstract

 食料価格や土地転換からの温室効果ガス排出に影響を与えることなくバイオ燃料作物を栽培するために利用できる土地の量は限定されている。そこで、研究チームは、輸送のためのバイオエネルギーは土地利用効率を最大限にするべきだと考える。バイオマスが動力を供給できるのは、バイオ燃料を燃やす内燃機関(エンジン)自動車か、バイオマスを燃やすことで生産される電気で動く電気自動車のどちらかだ。

 研究は、一定面積の土地から生産される量のバイオマスを燃やすことで得られる電気で動く車と、同じ面積から収穫される作物から転換される量のバイオ燃料で動く車の走行距離と温室効果ガス排出量を、多様な原料、転換技術、車のクラスで比較した。すべてで、バイオマス電気自動車が、トウモロコシエタノール自動車はもちろん、次世代バイオ燃料とされるセルロース(スイッチグラス)エタノール自動車さえ上回った。

 平均すると、バイオ電気自動車はセルロースエタノール車よりも81%長い距離を走ることができた。温室効果ガス排出削減量は、前者が後者の倍(108%)にもなったという。

 一般に、電気を生産するためにバイオマスを燃やすのは、同じバイオマスをバイオ燃料に転換するよりも効率的だ。内燃機関自動車よりも電気自動車の方がエネルギー効率が高いのも常識だ。当たり前の結果と言えばそれまでだが、こんな定量研究は初めてだ。輸送部門からの温室効果ガス排出削減策の中心にバイオ燃料促進を据える政策の根本的な見直しの契機になればと思う。

 米国もEUも、2022年までに360億ガロン、2020年までに輸送用燃料の20%などといった到底実現できそうもない目標を取り下げるチャンスかもしれない。