WTO農業交渉が停止 ドーハ・ラウンドは風前の灯

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.27

 先に予想したとおり(インド 明確な農業補助金撤廃・削減約束なしではドーハ・ラウンド成功の見込みはない,05.7.22)、農業交渉の行き詰まりのために、ドーハ・ラウンド成功の見込みは風前の灯となった。フィナンシャル・タイムズによると、交渉の枠組みに関する7月中の合意を目指して開かれていたジュネーブでの事務レベル協議が、農産物関税と農業補助金に関する各国の立場の違いが縮まらず、何の合意もできないままに停止した。農業交渉のグローサー議長が枠組み作成を断念したという(No WTO agreement on farm liberalisation talks,FT.com-world,7.26

 交渉参加者によると、行き詰まりの大きな要因は、特定品目の関税削減を小幅にとどめようとする日本やスイスなどで構成するG10に後押しされたEUが、農産物関税削減方式で譲歩を拒んだことにあるという。また、米国が国内農業補助金に関する譲歩に抵抗したことも大きい。EUとケアンズ・グループは米国が低価格を補償するための農民への支払いを制限するように迫っていたが、米国は歩み寄らなかった。

 ケアンズ・グループ代表の一人は、米国は、中米諸国との自由貿易協定(CAFTA)に関する今週の議会での投票に先立つ譲歩をためらったという。とりわけ繊維・砂糖産業の利益を代表する議員の抵抗で、CAFTAが承認されるかどうかは未だに不透明な状態にある。逆転承認を得るためにも、ここで譲歩するわけにはいかないということだろう。しかし、これでは、工業品自由化など他の難航する分野も含めた今月中の枠組み合意は不可能だ。

 米国通商代表部次席代表は、EUが同様にするなら国内農業補助金を議論する用意がある、農産物関税ではEUとG10が最大の問題と語ったというが、これは従来の議論から一歩も踏み出すものではない。

 農業交渉の行き詰まりが打開されないかぎり、今週末に別途協議される工業製品関税の大幅削減に途上国が合意することもありそうもない。9月に再開される交渉で劇的前進がないかぎり、ドーハ・ラウンドは間違いなく失敗に帰するだろう。