韓米FTA実現に新たな難関 米政府・議会の貿易協定新指針合意で協定再交渉も

農業情報研究所(WAPIC)

07.5.16

 米国との協定までも含む二国間自由貿易協定(FTA)の締結を急がなければ世界的な貿易自由化の流れに乗り遅れると、大方のわが国政府・経済界・学界関係者やマスコミを焦燥感に駆り立てている韓米FTA合意だが、その実現への道に新たな難関が現れた。ブッシュ米政府と米議会民主党との間で、現在交渉中、あるいは批准待ちの貿易協定や将来の貿易協定が従わねばならない指針に関する新たな合意がなったからだ。

 この合意により、既に政府間交渉が妥結し・批准を待っている韓米FTAを含むFTA(パナマやペルー等との協定)の再交渉も必要になるだろう。相手国は新たな米国の一方的要求を飲まないかもしれない。そうなれば、米議会の承認も得られない。その上、これらの協定だけでなく、ドーハ・ラウンドの成否にもかかわる”ファスト・トラック”法の期限延長も蹴飛ばされるかもしれない。

 このような合意がなったのは、議会多数派を占めるに至った民主党の支持なしでは、今後、一切の貿易協定の批准がおぼつかなくなったからだ。民主党は、かねて、協定相手国に対し、例えば妥当な労働基準や環境基準を守ることを協定で義務づけよなどと主張してきた。ブッシュ政府・共和党は、それは”保護主義的”だと拒み続けてきたが、ここにきて、批准が懸案となっているいくつかのFTAや今後の協定を救い、さらにはドーハ・ラウンド妥結にも不可欠な”ファスト・トラック”法延長のためには、民主党の要求を飲まざるを得ないところに追い込まれたわけだ。

 新た合意は、環境、政府調達、投資、知的財産権、労働、港湾の安全にかかわる。例えば、労働に関しては、協定当事国は、”労働に関する基本的原則及び権利に関するILO(際労働機関)宣言”に述べられた国際的に認められた五つの労働原則(結社の自由、団体交渉権の有効な承認、あらゆる形態の強制労働の排除、児童労働の有効な廃止と児童労働の最悪の形態の禁止、雇用・職業に関する差別の排除)を法的にも実際にも採用し、維持する義務を課される、といった具合だ。

 USTR:Final Bipartisan Trade Deal on Environment;Final Bipartisan Trade Deal on Government Procurement;Final Bipartisan Trade Deal on Investment;Final Bipartisan Agreement on Trade Policy: Intellectual Property Provisions;Final Bipartisan Trade Deal on Labor;Final Bipartisan Trade Deal on Port Security(07.5.1)

 この合意を受け、韓国政府は、米国が再交渉を持ち出し、一方的要求を突きつければ合意したFTA(協定全文は未公表)は瓦解することになるだろうと警告を発した。それでは四苦八苦してできあがった利害の均衡が崩れてしまうからだ。韓国の対米交渉主任は、米国は未だ公式には再交渉を要求してきていないと言うが、専門家は労働にかかわる協定の修正が問題になる可能性がある、韓国はILO労働基準に乗り遅れているから、修正なしでは米議会の承認は得られないと見ているという。

 Seoul warns of trade deal breakup if Washington asks for renegotiation,Yonhap,5.16