農業情報研究所
フランス食品安全機関、遺伝子組み換え食品のリスク評価に関する意見を発表
農業情報研究所(WAPIC)
02.1.31
1月30日、フランス食品安全機関(AFSSA)が「遺伝子組み換え体(GMO)で構成されるか、それに由来する食品の消費に関するリスクの評価」に関する意見書を発表した。これは、保健・農業・消費各省が1999年9月に行なった諮問に対する回答である。
この意見は、全体的には現在のリスク評価が不十分であることを強調、GMOの商品化に際しては一層の予防措置を要求している点に特徴がある。
意見書は、OECDが開発した「実質同等」の概念は新たな製品の無害性を立証するための方法としては不十分とすることから始める。実質同等の概念とは、新しい食品の無害性を評価するに際して、食品または食品原料として使われる既存の有機体が比較の対象となり得るとする考え方である。この概念に従えば、新しい食品と既存の製品の「実質同等」が証明されれば、遺伝子組み換えにより導入される蛋白質に関する試験以外の試験は無用となる。
しかし、AFSSAによれば、「GMOの場合には、一つの性質の導入・修正・除去という事実により、結果として生じる有機体は先験的に異なるものである」。従って、「実質同等の証明だけに基づくリスク評価は不十分なものであり、そのような製品の安全性の評価の免除を可能にするものではない」。
EUは、従来、既存食品と実質同等とみなされるGMOの商品化に関して、(完全な実験計画に従った評価を免除する)簡易手続を認めてきたが、審議中の新規則ではこの手続を廃止しようとしている。AFSSAは、このEU規則の修正が「正当化」されると述べている。
このように実質同等の概念の不十分を指摘したのち、意見書は以下の諸点を指摘している。
●アレルギーのリスクを可能なかぎり減らす予防措置を取ることが不可欠である。
●現在の規則は急性毒性試験しか要求していないが、組み換えられた要素を投与入した実験動物による慢性毒性試験が不可欠である。「そのような研究のよってのみ、長期的にあり得る生命システム、特に免疫・ホルモン・生殖システムへの影響を明かにすることができる」。
●実験動物への投与による毒性研究で明かにされない予期せざる影響を明かにするためにの補完的研究(遺伝子組み換え植物消費の様々な結果を分析する「許容量」の研究)の勧奨。
●抗生物質抵抗性をもつ遺伝子の存在に関連してあり得るリスクの研究。ただし、このリスクは「理論的」なもので、「既に環境中の存在する抗生物質抵抗性遺伝子に比べて無視できる」としている。
●とはいえ、抗生物質抵抗性遺伝子を利用する遺伝子組み換え細菌の利用は、腸の植物相のバクテリアへのこれら遺伝子の移転の無視できないリスクがある」。
意見書は、総じて、政策決定者と消費者にとって、これらの研究がもたらし得る保証のレベルを知ることが重要であるとしながら、これらの研究によって完全な無害性を決定的に保証することはできないということも強調している。
AFSSA:Avis
de l'Agence sur l'évaluation des risques relatifs à
la consommation de produits alimentaires composés ou issus
d'OGM
関連:フランス:GMOのアレルギー・リスクの評価,2001.12.19