ゴルフ場用GMグラスの花粉が21kmも先の野生種と交雑ー米国環境保護庁の研究

農業情報研究所(WAPIC)

04.9.22

 米国環境保護庁(EPA)の研究者が、ゴルフ場用に開発された除草剤(ラウンドアップ)抵抗性遺伝子組み換え(GM)ベントグラスの花粉が風に乗って21kmも移動、他の草と交雑を引き起こしたと発表した。この移動距離は、今までに観測されたGM植物花粉の移動距離の最高記録ではないかという。研究は、全米科学アカデミー・プロシーディング誌に発表された(Proceedings of the National Academy of Sciences: (DOI: 10.1073/pnas.0405154101))。

 この発見は、全米のゴルフ場でのこのGMグラス栽植を許すかどうかを決定するための研究がもたらした。研究者は、このグラスが2年間実験栽培されてきたオレゴン州マドラス近くの実験場所から10kmの範囲で育つ野生グラスの種子を採集して温室で育てた。改変遺伝子とラウンドアップ抵抗性を検査して、GMグラスとの交雑が明らかになったという。実験場所から2km以内で大規模な遺伝子汚染が見つかったが、花粉の一部は21km先まで飛び、汚染グラスの種子は310平方キロメートルの広大な範囲で発見された。

 従来、ラディッシュやヒマワリで1km、採油用ナタネで3km移動したといった研究はあるが、こんな桁外れの移動距離は聞いたことがない。そのつもりで調査すれば、他の植物でも、従来発見されていなかった距離の移動も考えられる。GM植物による環境汚染の懸念がまた高まった。

 GM汚染といえば、タイでは今、GMパパイヤを栽培する試験所周辺の農家のパパイヤのGM汚染が次々と明るみに出ている。農業・協同組合省の調査もこれを認めて大騒動になった。ドイツがタイ産パパイヤ加工食品の輸入を禁止するなど、農家や食品企業に直接損害ももたらしている。農業バイオテクノロジー開発の強力な推進の方針を打ち出したばかりのタクシン首相も、すぐに撤回する破目に陥った。