除草剤グリホサート(ラウンドアップ)に発癌性の疑い―フランスの研究

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.15

 フランスの”ル・モンド”紙の報道によると、フランスの研究がモンサント社の除草剤・ラウンドアップの活性成分・グリホサートの悪影響を試験管中での実験で示した。人間への影響についてはなお研究が必要であるが、発癌性が疑われるという。研究は2月24日の米国”Environmental Health Perspective”誌に発表された(Le Roundup n'intoxique pas que les mauvaises herbes,Le Monde.fr,3.12http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3244,36-401412,0.html)。

 ラウンドアップは残留性が低く、人間の健康や環境への悪影響が少ないと言われ、世界中で大量に使われてきた。また、これに負けない遺伝子組み換え(GM)作物の種子とセットで販売されるために、GM作物栽培の拡大とともに使用量が急増してきた。それだけに、この研究結果は重大な意味を持つ。

 研究者は、人間の胎盤の細胞の系統を使って実験、非常に低濃度のグリホサートで有毒な影響が示され、より低濃度で内分泌撹乱が起きたという。グリホサートを使う農業婦人の疫学研究で早産や流産の頻度が高いという結果が出ており、研究者は実験結果はその説明要因になリ得ると言う。影響は濃度だけでなく、暴露の時間にも比例している。

 ただし、活性成分であるグリホサートと拡散を容易にするための補助剤を加えたラウンドアップとの比較で、市販されている製品(ラウンドアップ)の方が純粋の活性成分(グリホサート)よりも撹乱作用が大きいことも確認された。研究者は、除草剤の評価は補助剤とのコンビネーションを考慮しなければならないと言う。

 研究者は、この研究はなお動物実験で拡張する必要があることを認めたが、試験管中の濃度と標準的利用の間の現実的関連性がないと言う批判者に対しては、「農業者は純粋の製品を希釈しており、ときに1000倍もの濃度に曝されている。我々の結果は暴露の時間も考慮すべきことを示している」と、農業者の高濃度・長時間被爆の可能性を指摘する。

 ラウンドアップの発癌性については、既に02年、フランス国立科学研究センターのブルターニュ・フィニステール研究班がウニの細胞分裂に深刻な傷害を惹き起こすことを発見、結論保留ながら疑いがかけられてきた(フランス:ラウンドアップ除草剤、ウニの胚の細胞分裂に影響、癌との関連に疑い,02.5.20)。昨年12月には、ウニに関する同じブルターニュの研究班が、グリホサートだけでは影響はないが、DNA損傷の”コントロール点”がラウンドアップで影響を受けることを示したという。

 研究者は、「これが一定のリスク要因」であることは示されたが、誘発されるかもしれない癌の数も、癌が発生する時機を評価するものではない」と認める。霧状の小滴は多数の細胞に影響を与えたが、「水中や果物の濃度はそれよりずっと少なく、これはむしろ安心させる」。従って、製品の禁止の問題ではなく、「今後の当局による便益とリスクの評価」の問題だが、その利用者は自身のためにも、公衆のためにも、十分な予防措置を取ることが重要だ、「私は、レクレーションの庭から数メートルのところで人々が散布しているのを見た」と言う。

 フランス食品衛生安全機関(AFSSA)の汚染研究調整官は、「試験管でのこのような研究は人間への影響を推論するには不十分」と言い、同じAFSSAの毒性学専門家は、ウニに関する実験は、「人間についてはなお証明されていない発癌のあり得るメカニズムを示す」ものと言っているという。

 他方、モンサントは、研究結果は他の多数の研究と矛盾し、EU当局、世界保健機関(WHO)、食糧農業機関(FAO)も発癌物質に分類していないと無視する構えだが、グリホサートは「勧奨に従って利用する必要がある」と言う。ル・モンド紙は、「予防的態度は会社のマーケッティングの努力といささか矛盾する」と皮肉っている。

 日本でも、グリホサートは農地のみならず、団地などの非農耕地でも使われているといい、施用者は扱いに十分に注意し、市民も気をつけるに越したことはなさそうだ。ペットも含む癌多発の一因となっているかもしれない。