英国最後のGM農場実験結果発表 除草剤耐性冬ナタネは野生生物に脅威

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.22

 3月21日、除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)冬ナタネ(カノーラ)とこれに対応する非GM冬ナタネの野生生物への影響が異なるという英国における大規模農場実験(FSE)の結果が発表された(http://www.defra.gov.uk/environment/gm/fse/results/fse-summary-05.pdf)。これは、03年10月に結果の評価(英国:GM作物農場実験評価報告発表,03.10.18)が発表された三つの春作物(ビート、トウモロコシ、春ナタネ)のFSEに次ぐ冬ナタネに関する4番目、最後のFSEの結果である。

 発表によると、GM品種と非GM品種が雑草の数全体に与えた影響は差がなかったが、GMナタネ栽培では昆虫が花を好む広葉雑草がより大きく減り、非GMナタネ栽培よりも蜂や蝶の数が大きく減った。農地の小鳥が好んで食べる広葉雑草の種も非GMナタネ栽培に比較して少なくなり、ロイヤル・ソサイエティーの野鳥専門家は、GM冬ナタネが商業栽培されると、戦後の増産を可能にした集約農業のために激減傾向にある野鳥の減少に拍車がかかると恐れている。また、GM栽培では科本科雑草とその種が増えた。環境団体(地球の友)は、この増えた雑草の防除のために農民が一層多くの農薬を使い、小鳥の一層の減少につながると言う。

 結果を報告した研究者は、この差違は遺伝子組み換えの方法ではなく、この作物が実験参加農民に雑草防除の新な方法を与えたこと、つまり農民は別の除草剤を使い、別のやり方で施用したために生じたと強調する。また、この結果は実験に使われた特定のGM冬ナタネと除草剤の適用されるものとも強調する。いずれにせよ、今回発表されたのは実験結果の報告のみで、今後環境放出諮問委員会(ACRE)が評価、それに基づいて政府がその商業栽培の認否を決定することになる。GM冬ナタネを一義的に否定する評価結果が出るのかどうかは未だ分からない。

 しかし、これがバイテク企業への新たな一撃となることは確実のようだ。前の実験で、唯一、GM品種の方が非GM品種の方が生物多様性への影響が少ないと評価されたトウモロコシでさえ、実験とまったく同じ方法で栽培するなどの厳しい条件付きで承認されたことから、開発企業は販売から撤退している。

 この結果の発表を告げる21日付のマスコミ報道は、すべて否定的な論調である。BBCは「GM研究、潜在”危害”を示す」(GM study shows potential 'harm')、Independentは「GM作物の終焉:英国の最終実験、野生生物への脅威を確認」(The end for GM crops: Final British trial confirms threat to ildlife)、News@natureは「GM作物にもう一つの打撃」(Transgenic crops take another knock)、NewScientistは「最終FSE、反GMの発見」(Final farm-scale crop trial finds against GM)などと見出しを掲げる。

 地球の友によると、この冬ナタネを開発したバイエル社は、EUにその承認申請取り下げの意向を表明したという(GM CROP TRIAL BLOW TO BIOTECH INDUSTRY ,3.21http://www.foe.co.uk/resource/press_releases/gm_crop_trial_blow_to_biot_21032005.html)。

 英国では、まさにGM終焉の様相だ。