インド GM食品表示義務導入へ 厳格な執行が課題ーインド紙が報道

農業情報研究所(WAPIC)

05.12.8

 インド紙の報道によると、インドが間もなく遺伝子組み換え(GM)食品(またはその成分)の表示を義務化する。GM食品・成分に関する専門委員会の勧告に従って1954年の粗悪(混ぜもの)食品防止ルールを改正、GM食品義務表示制度を導入するという。

 Labelling of GM foods to be made compulsory,The Hindu Buisness,12.8
 http://www.indiapress.org/gen/news.php/Business_Line/400x60/0

 インドは、2002年に害虫抵抗性(Bt)GMワタの商業栽培を許可、年々栽培面積を増やしてきた。国内で生産されるコトンシードからは食用の綿実油や飼料用の綿実ケーキが生産されている。その上、2001年に輸入数量制限を撤廃、輸入関税も少しずつ引き下げてきたから、農産食品の輸入も、多くの自殺農民を出すほどに激増した()。そして、主要輸入相手国のなかには、大量のGM作物(コーン、大豆、ワタ)を栽培する米国、ブラジル、中国などが含まれる。しかも、米国は義務的表示制度がなく、一般的には非GM品とGM品を区別することなく、混ぜて販売している。従って、これらの輸入品には、当然GM品が含まれる。

 これらのなかで最大の輸入品は、大豆油だ。FAO統計によると、大豆油の輸入は、2000年には58万3000トンほどだったが、2003年には99万トンを超えた。上記の報道によると、2005年には200万トンに達する。そのほとんどは、通常はアルゼンチンとブラジルのGM大豆から搾油されたものという。コーンの輸入も増えてきた。飼料製造者はコーンの輸入市場開放に抵抗してきたが、成功していない。さらに、最近は大量のワタ(非食用)も輸入されるようになったという。

 しかし、現在は輸入食品であろうと、国産食品であろうと、GMに関連した表示義務はない。現在の法律では、GMOの輸入は事前に政府のライセンスを得なければならないが、法律執行責任を負う役人はGMO輸入問題とライセンスの要件には無関心で、輸入大豆油の通関手続きは円滑そのものという。表示が義務付けられれば、これは変わるかもしれない。しかし、国産綿実油を新ルールがカバーするかどうかは、今のところはっきりしないという。

 報道によれば、いずれにせよ、新たな表示法がどのように執行されるのか、どのような表示が要求されるのか、未だはっきりしない。食用油の生産者・ディーラーを含む多くの食品製造業者は、混ぜ物など様々ないかがわしい手段を使って消費者をだましてきた。表示についても、厳格な法の執行が必要だという。

 しかし、それは、国内業界からだけではなく、輸出国からの抵抗にも出会う恐れがある。とりわけ、これにより輸出が減ることを恐れる米国が黙って見過ごすとは思えない。未だに不透明なEUのGMO規制に対する米国等のWTOへの訴えの結果が将来を大きく左右するだろう。EUは敗訴しても動かないだろうが、途上国には大きな影響があるだろう。

 (注)今月5日のFinaqncaial Expres紙がロイターの情報として伝えるところによると、マハラシュートラ州農民団体の指導者が、農民の自殺者は90年代末以来増えてきたが、今年は今までの州の自殺者が400人に達したを語ったことを伝えている。この指導者は、「不作、輸入関税引き下げ、民間高利貸しが彼らをこのような劇的行動に走ることを強要している」と語ったという。政府は、9月までの自殺者は134人と言っているというが、どちらにしても大変な状況だ。

 400 farmers in Maharashtra preferred death to debt this year,Finaqncaial Express,12.5
 http://www.financialexpress.com/fe_full_story.php?content_id=110594

 7日、カマル・ナート商業相は、政府は「それがWTO香港会合の失敗を意味するとしても、インド農民の利益を危機に陥れることも、補助金付産品にドアを開くこともない」と議会に保証した。インド農民が置かれた現状を考えれば、一層の輸入増加につながる合意は、香港閣僚会合が失敗に帰したとしても、あり得ないということだ。

 WTO: Kamal Nath's warning,The Hindu,12.8
 http://www.hindu.com/2005/12/08/stories/2005120815641400.htm