モンサントがGM”自殺種子”の開発・利用を画策 ウガンダで高まる不安の声

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.14

 モンサント社が、”ターミネーター技術”、つまり不稔性種子ー自殺種子ーを生産するように遺伝子を組み換えられた植物の商品化をしないという1999年の約束を翻し、非食料作物にターミネーター種子を利用、将来はターミネーターの他の利用も排除しないと示唆している。国連生物多様性条約(CBD)は、このような技術の事実上のモラトリアムの2000年に採択したが、ブラジルのクリチーバで開かれているCBD会合で、この事実上のモラトリアムの解除に向けた圧力を強めている。

 Monsanto May Commercialize Terminator Technology as Global Alliance Calls for a Ban,Canada NewsWire,05.2.11

  こうしたなか、持続可能な発展を促進するための市民論争を刺激する活動を展開してきたPanos Londonが、これに不安を募らせるアフリカ・ウガンダ農民の声を伝えている。

  Southern farmers confront challenge of Terminator II,PANOS (London),3.13
 http://www.panos.org.uk/newsfeatures/featuredetails.asp?id=1230

 それによると、ウガンダの状況は、この技術に関する知識が乏しいだけでなく、政府がその健康・環境リスクを評価するのに必要な専門知識と技術も持たない途上国世界全体の農民が直面する重大な問題を表現している。

 東ウガンダの農民組織・コミュニティー組織・市民社会組織の連合体である”食料への権利ネットワーク”(FORINET)は昨年、ターミネーター技術利用の健康・環境リスクに関する知識はほとんどないとCBDの科学諮問機関に書き送った。それは、「ウガンダにはこの新たなGMO技術の悪影響を監視するシステムがない」と言う。

 この技術について知らされた個別農民も心配を表明している。西ウガンダ・ブシェニ地域の一農民は、匿名を条件に、農民が毎年種子を買わねばならないとすれば、これらの種子の生産と販売をコントロールする多国籍企業に依存することになる」、さらに「貧しい国の農民は自分の種子を蓄えるやり方と種子遺産を失うことになり、所有権・主権・独立性・尊厳を失うことになる。我々はGM食品を拒否する国々への輸出市場を失うことにもなる」と語った。

 農民が抱く主な恐怖の一つは、ターミネーター種子の環境影響をめぐるものである。近隣の畑の非GM作物が花粉で交雑する恐れがあり、そうなれば在来作物も不稔化する。南西ウガンダ・ンバララ地域の豆・トウモロコシ農民は、「もし花粉交雑を通じて在来作物がGMO、あるいはターミネーターに汚染されれば、地方の種子生物多様性が破壊され、被害農民が種子企業に補償を請求するのは難しい。それを科学的に立証するのは簡単ではないからだ。その上、貧しい農民には高価な訴訟費用も払えない」と言う。

 大部分のウガンダ農民はターミネーター種子に反対しているが、これに利益増加の機会を見る少数者もいる。このような農民は、GM作物やターミネーター種子を利用したことはないが、もし商品化され、収量が良ければ、購入し、植えると言う。

 しかし、政府の国家環境管理機関南西地域官は、ターミネーターやその他のGM品種は環境への破滅的影響があり得る、コミュニティーは”no”という権利があると警告、「政府は種子製造企業に独立の社会・環境・経済影響分析を行い、これを関係コミュニティーに報告するように要求すべきである」と言う。

 他方、農業・漁業・畜産大臣によると、ウガンダ政府はトウモロコシ粉のようなGM食品を受け入れるだけで、ターミネーター種子も含むGM種子は断固として拒絶する。彼は、この技術の影響はすべての種子の90%が自家で採種され、大部分の農民が小規模の生業的農民であるアフリカ大陸では、世界のどこよりも大きく感じられるだろう、生物多様性の生残の土台は、生き、死ぬだけではなく、死ぬ前に自身を生まれ替わらせるすべての生物の能力にあると言う。

 さらに、アフリカの活動家は、WTOで交渉されている国際貿易ルールの一層の自由化が、GM種子や植物の利用が禁止されているウガンダのような国へのターミネーターや他のGMOの導入を容易にすることを恐れ、これを阻止するために活動家と科学者を糾合したの様々な運動を展開しているという。