ハンガリー 厳格なGM作物栽培規制法を採択 先行きはなお不透明

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.29

  ハンガリー議会が圧倒的多数の支持で、遺伝子組み換え(GM)作物栽培を厳格に規制する立法を承認した。

 ハンガリーは昨年1月、EUが承認したモンサント社の害虫(コーンボーラー)抵抗性トウモロコシ・MON 810の栽培を禁止したが、欧州委員会はEU法に反すると禁止解除を求めてきた。EU各国の代表で構成される環境総局規制委員会の今年9月の会合は、単純多数派が禁止解除を求める提案を支持したが、なお最終決着を見ておらず、12月の環境相理事会がこの問題を取り上げることになっている。

 しかし、ハンガリーはフランスに次ぐヨーロッパ第二のトウモロコシ種子輸出国だ。GMトウモロコシが導入されれば、GMOを拒み続けるEU市場における強力な地位を失いかねない。通常作物・有機作物・GM作物の共存に関するEU立法の欠如を理由に禁止解除をなお拒んでいる。欧州委員会の圧力をかわすと同時に、GM作物の栽培を事実上不可能にする狙いを持つ新たなGMO法案の審議を10月6日に開始した。それが27日に議会を通過したわけだ。

 この法律の下では、GM作物畑と隣の畑の間に400mの”緩衝帯”を設けねばならない。しかも、GM作物を栽培するためには、緩衝帯内のすべての土地所有者の書面による合意が必要になる。ハンガリーでは多くの圃場は小さく、賃借されているか、多くのメンバーを持つ協同組合により耕作されているから、最大規模の土地所有者を除く大多数の農家がGM作物を栽培することは事実上不可能だ。バイテク企業・一部農民・ハンガリー科学アカデミーの科学者グループは、このような厳格な条件は、ハンガリーでのGM作物栽培をほとんど不可能にすると批判する。

 また、セントイーストバン大学のLaszlo Heszky教授は、この法律は収穫・加工・包装に関するガイドラインを含んでおらず、通常作物とGM作物を栽培段階で分離するだけだから、共存の目標を達成するためには有効でないだろうと指摘する。

 さらに、グラフ農相は、これはあくまでも当面の措置で、人間消費用ではなく、バイオ燃料用のGMOに関する立場は後に再考することになるかもしれないと言う。また、農業副大臣は、ハンガリーが未だGMOを許したくない別の理由は、地方の条件に適した品種がまだないことだと言う。

 法律は成立したが、EUが拒絶するかもしれない。共存措置としての有効性にも疑問がある。その上、ハンガリー自身が今後の開発の進展に応じてGM作物の積極的導入に踏み切る可能性もある。先行きはなお不透明だ。

 Hungary Set To Pass "Strictest" GMO Crop Law,planetark.org,11.27
 http://planetark.org/dailynewsstory.cfm/newsid/39160/story.htm
 Hungary sets limits for GM crops,BBC,10.28
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6190720.stm