ブラジル大統領、農地改革加速を約束―40万家族に土地配分

農業情報研究所(WAPIC)

03.11.26

 11月21日、ブラジルのルーラ大統領が40万の貧困家族に土地を配分、所有権を与える、農地改革防衛を止めないと約束した。同時に農村地域の生活水準引き上げのために、4年間で240億レアル(約82億ドル)を支出する計画を発表した。

 農地改革の加速は大統領選挙運動の際の約束であった。だが、今年1月の大統領就任以来、一向に前進が見られない。しびれを切らした土地無し労働者運動(ポルトガル語の略称でMSTと呼ばれる)は遊休農地への侵略に走り、自己防衛のために武装した所有者との暴力的対決を繰り返してきた。大統領も、ようやく不退転の決意で改革を前進させる決意を固めたようだ。

 ブラジルは、カンクンWTO閣僚会合で、米欧の農業補助金が途上国小農民の生計を破壊すると主張するG20+グループを率いて闘った。これが会合を崩壊に導く要因のひとつとなったことは周知のとおりである。しかし、ブラジル自体の内実はこのような主張とかけ離れている。土地配分は世界一不公平な国と言われてきた。全農家の30%を占める10ha以下の農家が保有する農地は、全農地の2%にすぎない。たった2%の農民が全農地の半分以上を保有する。大豆の輸出は米国を抜いて世界のトップに踊り出る勢いだが、これはこのような巨大農場が生産するものだ。貧困を解消に向け、貿易交渉におけるその主張を正当化するためには、このような農地の構造の改革が不可欠だ。ようやくその方向に動き出したことになる。

 ただ、改革の詳細なプランは未だ分からない。輸出最優先の農業政策と農地改革をどう結び付けることができるのかも不明だ。今後の動きが注目される。

 News Source
 Brazil's Lula to Announce Agrarian Reform Bill,Estado Reports,Bloomberg.com,11.21
 Brazil Pledges Land to 400,000 Famikies,The New York Times,11.22
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