台湾が米国産牛肉輸入を再開 輸入条件緩和の国際的流れに日本はどう対処するのか

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.26

 日本が背骨付き肉混入で再開したばかりの米国産牛肉の輸入を再停止したにもかかわらず、台湾保健省が25日、米国産牛肉の輸入を条件付きで直ちに再開すると発表した。

 輸入が許されるのは米国で育てられた30ヵ月以下の牛からの特定危険部位(SRM)を含まない脱骨牛肉という。これは米国農務省が承認したと畜場と加工工場に由来するもので、米国農務省が出す証明書付きのものでなければならない。内臓やミンチ肉の輸入は許されない。米国牛肉の安全性を確保するために、米国のBSEステータスについて米国当局とコミュニケーションを継続するという。

 昨年合意された国際獣疫事務局の貿易基準に沿った条件と言えよう。米国は自国の主張を着々と実現しつつあり、わが国の輸入条件緩和に向けた動きにも弾みがつくだろう。

 日本政府は背骨付き肉の混入の原因が究明され、再発防止策が講じられないかぎり輸入再開はないとしているが、このような場合には違反工場からの輸入を停止するというのがもともとの合意であり、全面停止には確たる根拠はない。米国がと畜・食肉処理・出荷のプロセスにおける検査体制強化でお茶を濁せば、このような全面停止を続けることは難しくなるだろう。いずれ、米国の輸入条件緩和の圧力は強まる。

 今回の事件は明らかな単純な人為ミスであろうが、その背景には米国食肉産業と行政の体質ー構造的特徴があり、これは簡単には是正できるものではない。小手先の検査強化策で背骨が混じることはなくなるかもしれないが、効率最優先の食肉処理で脊髄神経節の確実な除去ができるとは思えない。SRMの確実な除去を「前提」としない米国牛肉のリスクの再評価、さらにはSRMの確実な除去を前提としても米国産牛肉についてなお残るリスクの再評価を視野に入れた対応を考えないと、とうとうと流れ出した国際的な流れに抵抗することはできなくなるだろう。