米国産牛肉輸入再開 全輸入品のSRM付着検査が不可欠

  農業情報研究所(WAPIC)

06.5.20

 米国産牛肉輸入再開をめぐる日米専門家会合が終わった。会合でどのような議論が行われたのかは明らかにされていないが、マスコミ報道によると、日本側は米国側が提出した安全管理体制の再点検結果(*)に関する疑問点を質した上で、「製品の安全性に問題なく納得できる」(日経)と評価、輸入再開手続きを進めることで大筋合意したという。

 *http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/dl/h0519-2c.pdf

 しかし、食肉処理工場の文書の点検だけでしかない再点検で何故「製品の安全性に問題なく納得できる」のか、理解に苦しむ。とりわけ重要な問題は、特定危険部位(SRM)が確実に除去されているかどうかだが、再点検報告は、日本に輸出されたすべての製品をトレースバック、SRMは一切含まれていなかったことが確認されたとしている。しかし、これは製品を実際に検査した上での結論ではない。各製品に関して残された記録文書を点検しただけだ。

 しかし、重要なことは、製品に実際にSRMが含まれていないことだ。消費者の最大の関心もそこにある。再点検報告は、このような関心には少しも答えるものではない。

 SRMの問題には、と畜場ではSRMの100%除去はできないということを「前提」に対処せねばならない。だからこそ、例えば、英国では十分な訓練を受けた検査官がと畜場に常駐、SRMが実際に除去されているかどうかを常に厳重に監視している。

 そして、このような監視ができない輸入品については、SRMが適切に除去されると認証された工場からの輸入に限定しているが、それでもSRMが常に確実に除去されるとは限らない。だから、EU加盟国以外からの輸入品の「すべて」を国境で検査し、SRMの付着が見つかれば食品連鎖から排除している。

 EU加盟国からの輸入品については、単一市場のルールで全量検査は許されない。それにもかかわらず、一部の加盟国からの輸入品へのSRM付着・残存が発見されたのちに「全量検査」を開始、これは現在も続けている(違反例:2001-02年2003年2004年2005年

 第三者による食肉処理工場の定期的点検が行われ、不適切な慣行が見つかれば是正措置が勧告されいるEUにおいてさえこの状態なのだ。

 まして米国については、たびたびの骨混入事件を見ても、SRM除去・検査能力ははるかに低いのではないかと疑われる。書類の再点検の結果報告を受けて「製品の安全性に問題なく納得できる」というような日本の専門家をどうして信頼できようか。このままでは、多くの消費者は決して納得しないだろう。輸入を再開するというのならば、それでも完全に安心というわけにはいかないが、最低限、英国のような全量検査が不可欠であろう。