中国のCO2排出の4分の1が米欧等海外の消費から 生産者と消費者の排出責任共有を 米国の研究

農業情報研究所(WAPIC)

10.3.10

  現在の国連気候変動枠組条約の下では、各国は自国内で発生した温室効果ガス(GHG)排出にのみ責任を負う。しかし、これはどうも不公正はないか。たとえば、米国を超える世界一のGHG排出国となった中国は、応分の責任を取って排出削減を約束せよと米国に迫られている。だが、米国は中国国内で生産された財を輸入しており、こうした財を生産するために排出されるGHGも中国の排出分として割り振られる。このような排出には、メイド・イン・チャイナ製品を「消費」しなければ生活が成り立たない米国人も一定の責任を負うべきではないのか。

 こんな議論は前からある。温暖化防止国際会合でこのような不公正をいかに正すかがまじめに議論されていたとすれば、現在のような国際交渉の行き詰まりは避けられたかもしれない。だが、こんな議論が実際的意義をもつことは決してなかった。「消費」に関連した世界のGHG排出量を実際に計算するのは難しいからだ。数字がなければ実際的議論は成り立たない。

 ところが、米国研究者がこのほど、各国における財とサービスの消費に結びついた排出量を計算してみせた。この計算においては、生産ベースの排出量計算では問題にされない輸出入が考慮されねばならない。研究者は、利用できる最新(2004年)のグローバル貿易データベースを利用、財とサービスが利用(消費)される国にCO2排出量を割り振った。

 世界のCO2排出の23%、6.2ギガトンが、主に中国その他の新興経済国から先進国の消費者に向けた輸出で国際的に取引されていた。スイス、スウェーデン、オーストリア、イギリス、フランスなどのいくつかの豊かな国では、消費ベースの排出の30%以上が輸入されたもので、多くのヨーロッパ人は、一人あたりネットで4トン以上のCO2を輸入していた。米国の純輸入はもう少し少なく、消費ベースの全排出の10.8%、一人あたり2.4トンだった。

 中国の排出の22.5%は海外で消費される財とサービスの生産で生じたもので、7.8%は米国に輸出される財とサービスの生産から生じていた。

 研究者は、「消費ベースCO2排出計算は、国際的炭素リーケージのポテンシャルを立証する。生産者と消費者の間での排出責任の共有は、排出の地域的・歴史的不公平をめぐる懸念によって現在妨げられているグローバルな気候政策に関する国際協定を促進できるだろう」と言う。

 Steven J. Davis and Ken Caldeira,Consumption-based accounting of CO2 emissions,PNAS published online before print March 8, 2010.
 Abstract:http://www.pnas.org/content/early/2010/02/23/0906974107.abstract?sid=054828cf-fec2-4b41-a217-4803c2023f28

 ついでながら、中国のブラジルからの大豆の大量輸入はアマゾン森林破壊による大量の排出CO2を輸入しているということだろうか。世界中の消費者がパームオイル増産のための熱帯雨林破壊で大量の排出CO2を輸入しているということなのか。工業製品のみならず、大量の食料を輸入する日本は、どれほどの排出CO2を輸入しているのだろうか。それでも、国内で削減が義務づけられれば生産を海外に移す(炭素リーケージ)と脅かす企業人さえいる。