中国、H5N1感染死の渡り鳥は5種、519羽 OIEに報告

農業情報研究所

05.5.24

 昨日、中国メディアの情報に基づき、中国でインドガン178羽のH5N1鳥インフルエンザ死が確認され、中国政府が全国にワクチン接種も含む厳戒を要請したことを伝えたが(中国、インドガンがH5N1ウィルスで大量死 全国でワクチン接種を含む拡散防止措置,05.5.23)、中国政府が国連食糧農業機関(FAO)と体制国際獣疫事務局(OIE)に伝えた勃発情報はメディアが伝える情報と非常な違いがあることが判明した。

 OIEの「警報メッセージ(alert massages)」に掲載された情報(⇒http://www.oie.int/Messages/050523CHN.htm)によると、OIEは中国農業部獣医長から5月21日にこの情報を受け取った。発見されたのは5月4日とされており、メディアの伝えるとおりである。発見された場所についても違いはない。ところが、感染が確認された鳥はインドガンだけではない。ほかに、オオズグロカモメ(great black-headed gull (Larus ichthyaetus) )、チャガシラカモメ(brown-headed gull (Larus brunnicephalus))、アカツクシガモメ(ruddy shelduck (Tadorna ferruginea))、カワウ(great cormorant (Phalacrocorax carbo))の4種の野鳥も含まれ、死んだのが発見されたこれらの鳥の総羽数は519羽となっている。最初の感染日は4月15日と推定されている。なお広範な感染が発見されるかもしれない。

 しかし、この事実は中国メディアではまったく報道されていない。本日付の人民日報は、中国政府が昨日FAOとOIEに報告したと伝えているが、このような報告内容は伏せたままである(http://english.peopledaily.com.cn/200505/24/eng20050524_186495.html)。政府が緊急措置を取ったことを強調、昨年はH5N1ウィルスの抑え込みに成功した、青海のウィルスは、いままでのところ人や家禽には広がっていないという政府の言い分を伝えるのみである。

 多種の渡り鳥の感染は、中国だけでなく、日本も含む近隣諸国へのウィルスの広がりの懸念を高める。中国の一層迅速な病気発見・確認体制の確立と国際社会への透明で迅速な情報提供が望まれる。

 なお、23日付のNewScientist.comの報道(Bird flu resurfaces in China;http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7416)によると、科学者は渡り鳥が中国にH5N1ウィルスを運んだ可能性は完全には排除できないが、ありそうもないと見ている。中国は大量のワクチンを使ったから、病気が顕在しないままにH5N1ウィルスが広範に潜伏している。アヒルでは症状が出ないこともある。鶏からの感染はありそうもないが、同じ水辺で暮らす中国国内の感染野鳥から感染した可能性が高いという。環境保全組織・Bird Life Internationalのリチャード・トーマス氏は、これら渡り鳥は1万メートルもの高度に達するから、以前には感染していなかったウィルスを運んで来ることが理論的には考えられるが、インドではH5N1が確認されたという報告はないと言う。