シベリアで鳥インフルエンザ H5N1型ではないの情報もあるが・・・

農業情報研究所(WAPIC)

05.7.23

 ロシア・シベリアのノボシビルスク地域で鳥インフルエンザが発生したようだ。最初に報道したBBCによると、ロシアのオフィシャルがGazeta.ru websiteにギース(家禽とすればガチョウ)200羽と鶏100羽が死んだと発表、ロシア非常事態省の報道官は、ウィルスはアジアで今までに57人の死者を出した高病原性のH5N1型のものではなく、AH5型と語ったとされていた(Siberian bird flu alarms Russia,BBC,7.21;http://news.bbc.co.uk/2/low/europe/4705087.stm)。しかし、その後の情報が交錯、詳細は未だよく分からない。

 国際獣疫事務局(OIE)は22日、ロシア農業食糧省から受け取った情報として次のように伝えた(Suspect avian disease in Russia;http://www.oie.int/Messages/050722RUS.htm)。

 病気はロシア南部・ノボシビルスク地域の5つの村で届け出られた。病気になったのは非営業的な開放型の生育場所の鳥である。最初の兆候は7月15日に発見され、7月18日になって大量死が発見された。7月20日午後4時(グリニッチ標準時+3)現在に利用できる情報では、様々な種類(ギース、アヒル、七面鳥、鶏)の少なくとも350羽が死んだことを示唆している。

 いくつかの兆候は、発生が高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)により惹き起こされたと疑うことを可能にするが、発生の一部詳細はHPAIに典型的なものではない(明白な種の特定性と発生場所内での拡散のパターンがない)。病原物質は連邦獣医・植物衛生サーベイランス基準試験所に送られた。試験所の診断結果は23日に出ると予想される。

 さらに23日の中国・xinhua.netの報道によると、ノボルビルスクにあるウィルス学バイオテクノロジー科学センター(Vektor)の専門家であるAlexander Shestopalovが、インターファックスに、H5N1よりは病原性が低く、人間には絶対に無害であるH5N2ウィルスであると語ったという(Novosibirsk Bird flu virus harmless to humans: Russian official;http://news.xinhuanet.com/english/2005-07/23/content_3255680.htm)。同氏は、ウィルスは地中海地域からきたもので、ノボルビルスクには多分渡り鳥により運ばれた。ウィルスは検査に供された6羽の死んだ鳥全てに発見されたという。

 ただ、昨年10月27日付けのProMED情報は、今回と同じノボルビルスクで「鳥インフルエンザ感染症例確認。・・・渡り鳥から、鳥インフルエンザH5N1型株が検出された。州ウイルス学バイオテクノロジー科学センター"Vector"内の動物疾患研究室責任者Alexander Shestopalov氏が指摘しているように、予備的な検査結果からは、同ウイルス株は、カモやガンといった毎年冬季に東南アジアで過ごす渡り鳥によって、東南アジアから持ち込まれたことが示唆された。春季および秋季に渡り鳥から採取された検体の検査が進行中であり、最終的な結果は、2004年12月に判明すると予想されている。Shestopalov氏は、H5N1型ウイルス株は2003年に採取された鳥類検体で確認されたと述べた」と報じている(http://www.forth.go.jp/hpro/bin/hb2141.cgi?key=20041029-0010)。同じ専門家が確認したのなら間違いなさそうだが、いささか釈然としないところも残る。

 12月に判明すると予想された最終的な結果については情報が得られないが、もしH5N1ウィルスと確認されていたのだとすると、今回のウィルスがH5N2型だとしても、中国の渡り鳥に発見されたH5N1ウィルスが、実は既にずっと前にシベリアに渡っていた可能性がある。そうであれば、このウィルスがインド、オーストラリアから果てはヨーロッパにまで運ばれる(既に運ばれている?)恐れがあるという指摘(Bird flu may soon land in Europe and Australia,newscientist.com,7.6;http://www.newscientist.com/article.ns?id=mg18725074.100)が一層現実味を帯びてくる。