排ガス中ナノ粒子がマウスの母体から胎児の脳・精巣に移行沈着の新研究 無責任なナノ化粧品開発

農業情報研究所(WAPIC)

05.9.22

 本日付の日本経済新聞(第14版、社会・42面)によると、東京理科大の武田健教授らの共同研究グループが、「ディーゼル排ガスを妊娠中に吸わせたマウスの胎児の脳や精巣組織に、排ガスに含まれる超微小粒子(ナノ粒子)が母体から移行して沈着、周囲の細胞に変性を起こしている可能性が高いことを突き止めた」。グループは、東京都内で21日に開かれれたシンポジウムで結果を発表、「ナノテク産業が生み出すナノ粒子についても、生体内での挙動や影響などを詳しく調べる必要がある」と指摘したという。

 同紙は「ナノ粒子の胎児への移行を確認した例はこれまでなく、世界でも注目されそうだ」と言うが、恐れられていたナノ粒子のリスクがとうとう鮮明になってきた。このようなリスクの可能性は既に指摘されてきたことであり、とりわけ英国では、ナノテク開発は適切な安全性評価と規制によって人々と環境へのあり得るリスクを最小限にせねばならないと警鐘が鳴らされてきた(ナノサイドは安全か 環境団体がナノテクの評価と監視を要求,05.2.8;英国王立協会等、安全で適切に規制されたナノテクノロジー開発を勧告,04,7.31;英国科学・工学アカデミー、ナノテクノロジーに警告 GM技術の教訓に学べ,04.7・26)。それにもかかわらず、遺伝子組み換え(GM)技術と同様、産業界はこの技術の利益・利点のみを強調、リスク評価もそこそこに、この技術を適用した新製品を次々と商品化してきた。

 例えば、「超微粒子を売りにしたファンデーションなどの「ナノ化粧品」について、日本化粧品工業連合会(粧工連)は、独自試験などでその安全性を検証していくことを決めた」と報ずる9月20の毎日新聞(インターネット版)によると、「粧工連が今年2月、化粧品会社や原料メーカーなど会員企業にアンケートした結果では、回答した478社の4分の1に当たる122社が「ナノ粒子を使っていると答えた。成分は、化粧品によく使われる酸化チタンと酸化亜鉛がほとんどだったが、粒子の大きさは20〜50ナノメートル未満が約半数を占め、20ナノ未満も約3割で、従来製品の10分の1程度だった」。

 ところが、「酸化チタンなどのナノ粒子については、皮膚の表面にとどまるとする海外の研究結果もあるが、粧工連は皮膚を透過するかどうかを動物の皮膚などで調べる予定だ」という。つまり、リスク評価は完全に後手に回っているわけだ。記事は、「ラットにナノ粒子を吸わせると、神経を経由して脳に入り込んだ−−などの報告が昨年、米国で相次いだ」とも指摘する。

 さらに、粧工連の「ナノ粒子製造会社への聞き取り調査でも、ナノ粒子を吸い込んだ時の影響は評価していないことが分かった。大手化粧品会社も「ナノ化粧品の刺激性や毒性などの安全確認は当然やっているが、ナノ粒子が皮膚を透過するかどうかまでは調べていない」と話す」、「海外では、炭素原子でできたカーボン・ナノチューブの粒子が、アスベストと同じような害を人体に与える可能性を指摘するリポートもある」が、「国内ではこれまで、体系的な調査や研究はなかったが、厚生労働省や環境省など4省は7月、ナノ粒子の安全性評価やリスク管理の方法に関する合同研究を始めた。今年度中に何らかの提言をまとめることになっている」などと、リスク評価・管理の遅れの実態を明らかにする。

 このまままでは、アスベストと同じどころか、それを上回る大規模で、取り返しのつかない健康・環境被害につながる恐れがある。新たな研究は、それを杞憂と片付けることがもはや許されないことをはっきりさせたと言えよう。

 日経新聞の記事によると、「グループは、妊娠二日から十六日まで一日十二時間、排ガスを吸わせた母親から生まれたマウスの脳や精巣組織を電子顕微鏡で観察。海馬や大脳皮質など脳内のさまざまな場所に極めて微小な黒い粒子が多数沈着、周囲の細胞が変性し、血管が細くなっていることなどを確認した。精巣の特定の組織にも微粒子が多数取り込まれ、細胞が変性していた」という。

 既に手遅れの可能性もあるが、特に化粧品会社の宣伝文句に踊らされてナノ化粧品に飛びついている女性たちは、リスク評価・管理体制が完成していないかぎり、即刻使用をやめたほうがいいかもしれない。このような商品の使用は、自らモルモットになることー人体実験ーを申し出ているようなものだ。