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インド農民がGM海賊版、米国農民はGMコーン過剰栽培

農業情報研究所(WAPIC)

03.6.20

 BBCがインド通信員からの報道として伝えるところによると、インド・グジャラート州で遺伝子組み換え(GM)特許権侵害(ピラシー、海賊)行為が横行しているらしい。農民はGM作物を好み、モンサント社の害虫抵抗性ワタと地方品種を交配、自分自身のGM品種を作り出すまでになっているという。デリーの通信員がグジャラートの農業地帯の市場町であるマンサに出向いて調べた。グジャラートは、昨年、モンサントの新GMワタを栽培したインド最初の諸州のひとつに入っている。

 農民は、このBtボル(綿実蛾幼虫)ガードと呼ばれる不法品種を数年間使っており、州で販売されるGM種子の半分は海賊版と考えられるという。町を歩けばテープ、衣類など、海賊版が溢れている。海賊行為はいまやGM種子にまで及んだというわけである。種子店に入るとマネージャーが近くの露店から購入したといういくつかの海賊版種子を持ち出し、ボルガードを地方ワタ品種と交配、グジャラートの独特な気候に合うように改良したものだと語ったという。

 こういう種子がはやる理由を、昨年、不法品種の方がモンサントのオリジナル・バージョンよりも成績がよかったと説明する。不法種子を撒いたという彼自身の2haの畑に行く途中、彼の友人は、現在Bt遺伝子を含む数種の不法品種があると語りかけてきた。周りの畑は無規制で、遺伝子操作の屋外実験場に化している。種子は発芽し始めたところで、近隣の畑のモンサントの公認品種より健全とは見えなかったが、彼の種子は安く、彼は貧しい農民だと弁明した。農民リーダーは州政府に海賊版の合法化を要求している。農民は、幾世紀もの間、自分の必要に適した品種を創り出してきたのであり、今やっていることは同じことをGMでやっているだけだと語る。

 不法種子の取引はモンサントの中心的関心事となってきた。モンサントのインド関連企業は海賊版取締りを求めて州政府に公式提訴した。

 以上は、India's GM seed piracy,BBC News,6.17による。

 なお、グジャラートでは、モンサント系Mahyco社が栽培実験用に持ち込んだGMワタ種子が不法に販売され、「家内工業」に転用されているらしいことは既に伝えたとうりである(インド:GMポテト給食で栄養不足、実験承認にも不備,03.6.16)。このような種子が地方品種との交配に使われているということであろう。

 GM反対者には不謹慎と言われるかもしれない。これを放置するのは非常な災厄につながるかもしれないことを否定するつもりはないが、ここまでくると、インド農民には「幾世紀」にもわたり受け継がれてきた「農」の魂を感じる。それは巨大バイテク企業を苦もなく手玉に取っている。

 それに引き換え、米国・ネブラスカの3千の農民(全体の22%)が、Btコーンを栽培する場合にはコーン畑の80%に限り、残り20%には非GMコーンを植えねばならないという連邦ガイドラインを無視、100%Btコーンを栽培していることが発覚したというニュースには、ただただあきれ返るだけである。この過剰栽培農民の比率はミネソタでも18.2%になるという(Report sees biotech overplanting,omaha.com,6.19)。Bt抵抗性害虫を増殖させて技術の有効性を損なうことは、結果的にバイテク企業を困らせることになる。しかし、それは「農」の魂をビジネスに売り渡した結果でしかない。GM大豆を勝手に栽培している日本の一部農家も似たようなものだ。