農業情報研究所農業バイテクニュース:2013年5月30日

米国・オレゴン州の農場で除草剤耐性GM小麦発見 風評被害恐れる米農務省

 米国農務省(USDA)動植物検疫局(APHIS)が5月29日、オレゴン州の農場で採取された植物サンプルの検査で除草剤(グリホサート)耐性遺伝子組み換え(GM)小麦の存在が示されたと発表した。USDAの研究所によるさらなる検査は、このGM小麦が、モンサント社が1998年から2005年まで、16の州でフィールド試験を許されていたのと同じグリホサート耐性GM小麦品種の存在を示唆している。APHISは、オレゴン州の農家が農場で発見した除草剤で枯れない小麦の検査でグリホサート耐性GM小麦が存在する可能性が認められたというオレゴン州立大学の研究者からの通報を受けて公式調査を始めたという。

 販売または商業生産を承認された小麦品種は、いまのところ、米国にも、世界のどこにもない。ただし、今回存在が認められたGM小麦の食品医薬局(FDA)による安全性審査は2004年に完了しており、この小麦の発見は安全性の問題を何ら提起するものではない。それでも、APHISは”事態は非常に深刻”ととらえ、調査を開始したのだという。どうしてこんなことが起きたか、できるだけ速やかに明らかしに、違法行為があれば植物保護法(PPA)に定められた厳罰に処するという。

 USDA INVESTIGATING DETECTION OF GENETICALLY ENGINEERED (GE) GLYPHOSATE-RESISTANT WHEAT IN OREGON,APHIS,13.5.29
 http://www.aphis.usda.gov/newsroom/2013/05/ge_wheat_detection.shtml

 APHISの言う深刻な事態とは、言うまでもなく市場の反応だろう。オレゴン州で生産される小麦の90%は輸出される。「どういう反応が出るか考えたくもないが、米国は小麦の首位の生産者及び消費者であり、この種の「事象(イベント)」(事態を軽く見せる東電お得意の用語法)は種子生産者・農家から小売業者・消費者にいたる食料・飼料供給チェーンに呼び起こす可能性がある懸念を直接知っている」と言う。要するに、日本でも大流行の「風評被害」を恐れているわけだ。

 GM小麦が気づかれないままに広がっているとすれば、それはここだけに限らないかもしれない。気づかれないままに既に輸出されている可能性さえ排除できない。動物の飼料成分となることが多いトウモロコシや大豆と異なり、直接人の食料となる小麦のGM品は消費者や市場の拒絶反応が強い。だからとりわけ輸出市場を失うことを恐れる北米の農家もGM小麦だけは受け入れをためらってきた。従って、モンサントも、干ばつ耐性品種を渇望する農家の声に応えて最近再開したものの、2004年以来、GM小麦開発の中断に追い込まれていた。そこにきてのこの「事象」、風評被害の直撃を食らう農家のみならxず、モンサントにも甚大な被害が及ぶ恐れがある。

 Questions and Answers,APHIS,13.5.29

 関連ニュース
 Genetically modified wheat found in Oregon field raises trade concerns,Guardian,5.29
 
Modified Wheat Discovered In Oregon,The New York Times,5.30