日本農林水産業:各地の動き:新聞報道から 過去1週間(農業情報研究所 

 

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 2022年12月28日

   

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農業産出額5年連続2位の鹿児島県、頼りの畜産がけん引 農家の手取りも大きく改善 南日本新聞 22.12.28

  

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標茶 持続可能な酪農を目指して 10年目のTACS>上 科学に基づき技術伝承 北海道新聞 22.12.27

 12月上旬、午前5時半の外気温は氷点下10度を下回る。釧路管内標茶町中オソツベツにある農業生産法人「TACS(タックス)しべちゃ」の牛舎内で、釧路市出身の丹後谷颯季(さつき)さん(27)が搾乳を手際よくこなしていく。「ベテランのように素早く牛の健康状態を判断できるようになるにはまだまだ。勉強の毎日です」

■後継者を育成

 TACSは2013年、標茶町農協と雪印種苗(札幌)、標茶町が出資して設立した。輸入飼料への依存度を下げた低コストの草地型酪農による経営確立と農業後継者の育成が事業の柱だ。当時は全国的にも珍しい取り組みだった。

 現在は育成牛を含め520頭を飼育し、1日約7トンの生乳を搾るほか、320ヘクタールの耕地で牧草とデントコーンを栽培する。場長と副場長のほか社員5人とパート5人、就農を目指す研修生として丹後谷さんと夫婦2組の5人が働く。

 研修は原則2年間。最初の1年間はTACSのスタッフから、搾乳や給餌、牧草の播種、収穫などの方法を学ぶ。続く1年間は町内の指導農業士の下で研修を重ねる。農協や町の職員による講義も40回ほどあり、専門知識の習得に努める。

 佐合秀康場長(46)は「短期間で一人前になるよう、経験だけではなく科学的なデータに基づいた指導を行っている」と話す。支援体制も手厚い。研修生には町や農協主体でつくる担い手育成協議会などが約15万円の給料を支払う。住居は廃校を利用した酪農研修センター「しべちゃ農楽校」を格安で利用できる。

■新規就農続々

 TACSはこれまで71人を受け入れ、24人が標茶町内で新規就農を実現した。野口伸一副場長(36)は「後継者育成は順調。研修施設を持っているのと、町などの支援が整っているのが強み」と、これまでの歩みに手応えを感じている。

 2020年に東京を離れ夫妻でTACSの研修生となった栗原義裕さん(30)は、今年10月に標茶で就農したばかり。「研修仲間やスタッフがたくさんいて心強い。自分が学びたい技術や作業に集中して取り組める環境がある。研修中は子供を預かってくれたので助かりました」と話す。

 一方、標茶町農協の21年度の生乳生産戸数は212戸で、TACS発足の13年度と比べ58戸減少。輸入飼料の高騰など経営環境の厳しさから、全道と同様に減少傾向にあることに変わりはない。

 17年に新規就農した1期生の夫妻はTACSが掲げる理念の下、輸入飼料に依存しすぎない酪農に取り組み、少しずつ成果を上げていた。(弟子屈支局の清水竜也が担当し、2回連載します)
 

新規就農24人増76人 オホーツク管内21年 農家出身新卒は全道最多 北海道新聞 22.12.27

 道が2021年の新規就農者の実態調査結果を公表した。オホーツク管内では前年比24人増の76人が就農した。管内別では十勝の101人、空知の80人に次いで3番目に多かった。

 76人の内訳は、農家出身の新規学卒が同21人増の44人、Uターンが同4人減の21人、新規参入が同7人増の11人。新規学卒は全14振興局管内で最も多かった。理由について、オホーツク総合振興局では「明確には分からない」としつつ、「1戸当たりの耕作面積の規模拡大に伴い、人手が必要な農家が多く、親元に戻った学生が多かったのでは」と推測する。

 きたみらい農協では、親元での就農を目指す人が大型自動車免許やけん引免許を取得する場合、費用の一部を補填(ほてん)する支援事業を独自に実施。担当者は「補助の充実や農業の魅力が広く伝わっていることが就農へつながっているのでは」と考える。

 

加工乳10円上げ 「例を見ない」道内酪農家歓迎 需要減に懸念も 北海道新聞 22.12.23

 2023年度からの加工向け乳価の10円引き上げ決定を受け、飼料価格高騰などで経営状況の厳しい道内酪農家からは、歓迎の声が上がった。だが設備投資に伴う償還額が大きい酪農家などは厳しい状況が続く。コロナ禍で低迷する需要と生産量とのギャップ解消のために酪農家は生産を抑制しており、製品値上げに伴うさらなる需要減退への懸念もある。過去最大幅の引き上げにも霧は晴れない。

 釧路丹頂農協(釧路管内鶴居村)の千葉喜好(きよし)組合長は「加工向け乳価の10円引き上げは本当にありがたい。離農に歯止めがかかるはずだ」と評価する。同農協に所属する酪農家は118戸。12月に精算時期を迎える農協の決済口座「組合員勘定」では今年は9割が赤字。千葉組合長は「10円引き上げで、今年の赤字農家のうち半数ほどが来年は黒字転換できそうだ。ただ、コスト増加や牛の個体価格の低迷で、依然として赤字農家は残る」と指摘する。

 十勝管内の上士幌町農協の小椋茂敏組合長は「ここまで大幅な値上げは例を見ない。乳業メーカーも酪農現場の状況に理解を示した。ホクレンの乳価交渉への努力はありがたい」と評価。一方で「脱脂粉乳の在庫削減にかかる出口対策への拠出金などで酪農家の手取りは減る。来年度も生産抑制は続き、値上げ分でコスト高は吸収できず、単純には喜べない」と強調した。

 同管内豊頃町で搾乳牛850頭を飼養する農事組合法人Jリードの井下英透代表は「(飲用向け乳価が上がった)11月にさかのぼって値上げすべきだ」と憤る。輸入飼料の高騰などで牧場は1億円の赤字。井下代表は「国やホクレンには現場が全く見えていない。来年度も生産抑制が続き、離農する酪農家もますます増える」と案じた。

 搾乳牛約400頭の「希望農場」(根室管内中標津町)の佐々木大輔社長は国の畜産クラスター事業を活用し、規模を拡大してきた。「加工向け乳価が10円上がり、少しは良かった」としつつ、増産前提の経営なのに生産抑制を迫られる現状に「前に進むか、やめるかしかできない」と複雑な心境をのぞかせる。カギを握るのは需給ギャップを解消できるかどうかで、「乳価引き上げに伴う製品値上がりも見込まれ、消費動向が気になる。乳製品の輸出戦略と脱脂粉乳の在庫処理もセットで考えるべきだ」と訴えた。

 

 

    

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農業産出額5年連続2位の鹿児島県、頼りの畜産がけん引 農家の手取りも大きく改善 南日本新聞 22.12.28

 農林水産省は27日、2021年の農業産出額を公表した。鹿児島県は総額4997億円(前年比5%増)となり、5年連続で全国2位を維持した。新型コロナウイルス禍からの回復が顕著だった肉用牛を中心に、主力の畜産が200億円以上上積みして全体を押し上げた。
 畜産の産出額は3329億円(7%増)で、全体の3分の2を占めた。肉用牛は1240億円(8%増)で全国トップ。和牛肉輸出が過去最高を記録するなど需要が堅調で、相場を下支えした。豚も初めての大台乗せとなる900億円(5%増)で「日本一」の座を守った。
 鶏卵は316億円と前年から16%伸びた。2年続けて全国の養鶏場で相次いだ高病原性鳥インフルエンザで鶏が殺処分され、相場が高値基調で推移したことが要因。ブロイラーは736億円(5%増)だった。
 野菜や果実などの耕種(加工農産物含む)は、ほぼ横ばいの1668億円。サツマイモが、県内全域で多発した基腐(もとぐされ)病の影響を受けて16%減の118億円にとどまった半面、茶はペットボトル飲料向けの需要拡大で21%増の239億円と好調だった。サトウキビも天候に恵まれて130億円と前年を12%上回った。
 農家の手取りに相当する生産農業所得は1712億円となり、前年の1415億円から大きく改善。農業産出額に占める割合も34.3%で4.6ポイント増え、前年最下位だった全国順位は40位まで上昇した。
 農業産出額1位は北海道(1兆3108億円)、3位は茨城県(4263億円)だった。

 

鳥インフルエンザ 長崎県内初確認 佐世保・江迎の養鶏場で殺処分開始 長崎新聞 22.12.23

 長崎県は22日、佐世保市江迎町の養鶏場で見つかった高病原性鳥インフルエンザが疑われる事例に関し、遺伝子検査で陽性を確認したと発表した。県内の養鶏場では初めて。同日、この養鶏場で飼育する採卵鶏27千羽すべての殺処分を開始し、午後3時時点で12910羽(48%)を処分した。25日朝までに埋却、消毒も含めて防疫作業を完了する予定。
 21日に簡易検査で陽性だった13羽の遺伝子検査を実施し、全羽から高病原性の「H5亜型」の鳥インフルエンザウイルスが検出された。今後、国が高病原性かどうかの確定作業を進め、1週間で結果が判明する見通し。県によると、県内の他の137の養鶏場から異常は報告されていないという。
 県は発生養鶏場を中心に半径3キロを移動制限区域(佐世保、平戸、松浦3市の一部、養鶏場など5戸)に、半径10キロを搬出制限区域(同3市と佐々町の一部、同22戸)に設定し、ニワトリや卵などの移動や出荷を制限。半径10キロ以内に関係車両の消毒ポイントを4カ所設置した。
 大石賢吾知事は県幹部の会合で「迅速な初動対応でウイルスの封じ込めに万全を期してほしい」と述べた。
 また知事は農林水産省の勝俣孝明副大臣とオンラインで会談。家畜伝染病予防法に基づく発生農家に対する手当金の円滑な支給や、防疫資材が不足した場合の支援を要望した。
 県は人が鶏肉や卵を食べて鳥インフルエンザに感染する可能性はないとし、死亡野鳥を見つけたら素手で触らず県や市町に連絡するよう呼びかけている

 

焼酎原料のサツマイモが確保できない…基腐病、鹿児島県内メーカーに影響 販売休止や生産計画に狂い 焼き芋、スイーツ人気で取り合いも 南日本新聞 22,12.23

  サツマイモが腐る伝染病「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」が、鹿児島県内の焼酎メーカー各社に影を落としている。過去最悪だった2021年産ほどの発生ではないものの、原料の芋を十分に確保できていない。一部商品の販売休止を続けたり、生産量が計画に届かなかったりする例が出ている。
 県によると、2022年に基腐病の症状が1株以上確認された畑は3500ヘクタール。過去最悪の7686ヘクタールだった前年から半減したものの、なお35%と高い発生率が見込まれる。
 「販売休止を解消できず残念。お客さまに対して恐縮するしかない」。濵田酒造(いちき串木野市)の平石智也コミュニケーション部長(46)は苦しい胸中を打ち明ける。
 昨季は仕込み量を減らさざるを得ず、今年4月から主力銘柄「海童」の大容量品など7品の販売を休止している。今季も芋の確保は例年の8割程度。「焼き芋やスイーツ人気もあり、取り合いが起きている」
 大海酒造(鹿屋市)は収穫時期を早めるなどしたが、計画した量を確保できなかった。蔵ケ崎洋樹企画開発室長(43)によると、基腐病に嫌気が差したのか、芋の生産をやめる農家が増えた。「メーカーの競合もあって芋の価格はますます上がる。このままでは焼酎の価格に影響しかねない」と危機感を募らせる。
 「白波」などの薩摩酒造(枕崎市)も十分に芋を確保できず、今季は計画通りの生産量を達成できないという。出荷制限の予定はないが、マーケティング部の本坊直也取締役部長(36)は「芋だけでなく、さまざまな物が値上がりし、自助努力にも限界がある」。10月に全銘柄を値上げした。「引き続き安定供給に取り組む」と力を込めた。