農業情報研究所意見・論評または東電福島第一原発事故関係2011年7月14日

原発問題 今の危険を脱せずして、どうして将来の安全 政府が今全力で取り組むべきこと

 原発事故を契機に、脱原発とか、自然エネルギー促進とか、原発やエネルギーの将来に関する議論が盛り上がっている。結構なことと思うが、「将来は原発がなくてもやっていける社会を実現する」(「脱・原発依存」を表明首相 東京新聞 11.7.14)とか、いや「政府の統一見解というより、国民的な議論を進めていこうというのが今の政府の立場だ」(首相の「脱原発」発言を修正 枝野氏「総理の希望」 朝日新聞 11.7.14)など、政府要人が呑気に議論している場合ではない。

 どっちにしろ「将来」の安全をにらんでの話だが、国民は、今現在、放射能汚染からくる危険のまっただ中にいるのである。彼らはいま、起きてしまった原発事故の収束と、国民の被ばくからの防護・国土の除染に全力を注がねばならない。それなしの将来の安全などあり得ない。しかるに、彼らはいま、現実を直視することなく、将来に逃げていないか (原発廃止が安全に直結すると思い込んで。廃止後の原発の安全をどう確保するのか、廃炉・解体のために長期にわたって必要となる労働者や技術者をどう確保するのか、核廃棄物をどう安全に処理するのかといった将来の問題には考えが及ばない)。

 私の生涯の大半がこの原発事故で無意味になってしまった。自分は今まで何のために生きてきたのか。老い先短い自分にとっても、これは、果たさなければ死んでも死にきれない課題なのだ。将来の話は若い世代に委ねよう。私たちにそんな時間はない。子どもたちの被ばくを防ぐこと、すべての人々が元通りに暮らせる環境を取り戻すこと、そのためにできるすべてのことに取り組まねばならないと考えている。