農業情報研究所意見・論評・著書等紹介2012年8月9日

環境省の森林除染「不要論」 国による山村再生の責務放棄は許されない

  今日付の日本農業新聞のコラム欄「万象点描」に、「森林除染不要の方針 国の責任放棄は許されぬ」と題する一文を掲載していただいた。7月25日に開かれた環境省の第5回環境回復検討会が、住居近くの森林は別として、森林全体の除染は「必要がない」とする方針を固めたこと(住居周り限定除染を 森林対策で提案 環境省検討会 日本農業新聞 12.8.1も参照されたし)を批判したものだ。森林全体の除染がどんなに難しいとしても、だからといってそれを「不要」として片付けることは許されない。それは、森林なしでは生業(なりわい)が立ち行かない広大な山村地域を再生させるという国の責務を放棄するに等しいというのがその趣旨である。

 このような主張を裏づけるような具体的な一例が、やはり今日付の東京新聞で紹介されている。私の主張を理解する一助になればと、下に要約・紹介しておく。 


 シイタケ栽培 諦めない 3・11後を生きる 被災地発 東京新聞 12.8.9 朝刊 4面

 東電福島第一原発事故の影響で宮城県登米市の原木シイタケが出荷停止になってから3ヵ月が過ぎた。登米市森林組合の竹中雅治さんは農業用の熊手で斜面の土を剥ぎ、下草を刈る。原木シイタケを育てる斜面の除染作業だ。

 登米市森林組合はもともと間伐や木材加工が中心だったが、木材価格が低迷、林業の衰退に歯止めがかからず、活路を求めて1990年からシイタケ栽培を始めた。毎年1万2千本の原木から約二千三 百キロのシイタケが採れ、登米市の名産品に定着した。

 それが原発事故で一変。今年4月、同市のシイタケからキロ110ベクレルの放射性セシウムが検出され出荷停止、1万2千本の原木が「汚染ごみ」となった。原木の放射性セシウム汚染基準はキロ50ベクレル、汚染されていない木を集めるために汚染マップを手に山林を歩き回ったが、5百本を確保するのがやっとだった

 登米市は政府の財政支援がある「汚染状況重点調査地域」に指定されておらず、除染は自己負担。竹中さんらは自分たちで山の除染を続けている。