本の紹介 中村宗弘『近代農政思想の史的発展』 「改革」論者の位置は?

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.25

 中村宗弘氏の『近代農政思想の史的発展』(2007年12月10日、発行:中村宗弘、制作:丸善出版サービスセンター)が発刊された。幕末・明治以降現代に至るまでの日本近代農政思想の史的発展を、時代の代表的な人物の著作や言行を通じて考察、併せて、主として20世紀後半の西欧、とくにフランスと欧州連合(EU)の農政思想と農政思想家についても考察したものだ。

 この間、「農政思想は多くの変遷をとげ、さまざまな様相をみせてきた。・・・・・・社会・経済の発展にともない、社会思想も時代の変化に対応して生まれ、成熟し、やがて新しい対抗思想にとって替わられる運命にある」。しかし、そのような歴史のなかでも、「変ることのない二つの思潮がある。それは、「農業」、「農業政策」に重点をおいた思潮と、「農民」、「農民政策」に重きをおく思潮である。この二つの思潮の対抗関係は、近代日本農政思想史を貫く基調であった」という。

 ところで、1990年代には、それまでの戦後世界を支配してきた「市場価値のあるもの、経済効用のあるものだけが尊重され」、「環境や景観など社会的に貴重なものでも市場価値で測れないものは軽視される」「市場原理主義」、「経済効用主義」に対して、「人間中心の発展」という対抗思想が生み出された。

 ヨーロッパの生産能率優先の農政思想は、今や1999年フランス農業基本法に典型的に示されるように、「農業の多面的機能尊重の農政思想へと大きな転換をとげつつある。だが、そこには、マンスホルトがかつて示唆した「モノ」から「ヒト」への、人間重視の思想が大きく成長している。人間重視の思想は、農政における「農民政策」重視の農政思想となる」。

 日本では今、「改革」思想、生産能率優先の農政思想、「農業政策」に重点をおいた思潮が全盛だ。改革派は、おのれの思想が「農政思想の史的発展」のなかでどのように位置づけられるか、考えることがあるのだろうか。彼らにこそ熟読してもらいたい本だ。