食料自給率50%達成のための小麦・大豆等生産目標 荒唐無稽な農水省素案

農業情報研究所(WAPIC)

10.3.13

 農水省が今後10年の農政指針となる「新たな食料・農業・農村基本計画」の素案をまとめた。素案は2020年の食料自給率目標をを50%に設定、これを達成するための野心的な品目別生産目標を示している。日本農業新聞(3月13日付 3面)のまとめによると、主要品目の生産 目標は下表に示すとおりである(単位は万トン)。

 

現行実績(2008年)

現計画目標2015年

新計画目標2020年

882.0 891.0 975.0
小麦 88.0 86.0 180.0
大麦・裸麦 22.0 35.0 35.0
ソバ 2.7   5.9
サツマイモ 101.0 99 103
バレイショ 274 303 290
大豆 26.0 27.0 60.0
野菜 1265 1422 1308
果実 341 383 340
ナタネ 0.1   1.0
生乳 795.0 928.0 800.0
牛肉 52.0 61.0 52.0
豚肉 126.0 131.0 126.0
鶏肉 138.0 124.0 138.0
鶏卵 255.0 243.0 245.0
砂糖 94.0 84.0 84.0
テンサイ(精糖換算) 74.0 64.0 64.0
サトウキビ(精糖換算) 19.0 20.0 20.0
9.6 9.6 9.5
飼料作物(TDN) 435.0 524.0 527.0
きのこ 45.0 43.0 49.0

 現状または現計画目標と比べて増加が目立つのは、米(米粉、飼料用米など新規需要米の増加が中心)、小麦、ソバ、大豆、ナタネ、飼料作物である。ナタネ、ソバは倍率は大きいが絶対量は少ない。問題は、米、小麦、大豆、飼料作物(飼料用米はこれに含まれているのだろうか、それとも「米」に含まれるのだろうか)のこれほどの生産拡大をどうやって実現するかであろう。とりわけ、小麦、大豆の生産目標は、野心的というよりも、荒唐無稽というべきかもしれない。実現への道などまったく見当もつかないままに、ただただ、自給率目標達成のために必要な数字をひねり出しただけではないかと思われる。

 小麦と大豆の作付面積と収穫量の明治初期以来の推移は下図に示すとおりだ(資料は農水省)。小麦については、昭和30年代半ばには目標レベルの180万トンを生産していたが、以後は外麦に押されて半減してしまった。大豆にいたっては、60万トンの目標レベルの収穫をしたことは史上一度もな く退潮に向かっている。貿易自由化・グローバル化(と基本法農政)が生産構造と消費構造を完全に変えてしまった。耕地が減り、人が減り、耕地利用率(延べ作付面積/耕地面積)が減り続ける いま(耕地面積と延べ作付面積の長期推移も図に示しておいた)、どこの誰がこんな生産を復興できるのだろうか。

 農家は国の食料自給率目標を達成するためにのみ働いているわけではない。働きがい、生きがいは、もっと別のところにある。というのに、食料自給率目標達成のために、減反強制ならぬ作付強制でもするつもりだろうか。ともあれ、下の図を見れば、議論の余地もない。革命でも起きないかぎり、目標達成はありえない。農家・農村は、こんな計画に惑わされることなく、自分が最善と信じる道を地道に進めば いい。