宮坂敬造担当 『人間科学諸領域D』<2003年度>
レポート試験等掲示欄

 

夏期レポート提出について

10月17日に学事センター提出期限は終了しました。参考のために、レポート課題を再録します。
(この配点は、全体の30%予定)  

問題1・ 広い意味で異文化にかかわる現象のどれかをとりあげ、それについての自分の経験ないし
簡単な調査から えた 事例を かならず示して、その文化現象についてその特徴や推論による
パタ−ンの分析等をおこない、各自の考察を示せ。
(たとえば、外国での経験、世代文化、学生のサ−クルにみられる文化、 うわさ話等々、
各自、興味ある文化の問題を自由に選ぶこと)。 

問題2・ 各自が興味をもった文化の諸理論からひとつを選んで、文献を参照しながら、
その文化の理論について簡潔にまとめて、 各自の論評を述べよ。
なお、参考文献等はすでに配布している『哲学』(別冊・文献案内)の人間科学諸領域Dの項を
参照すること。

 

小テスト

以下の小テストを行いました。

人間科学諸領域D 03年7月17日施行・期末理解試験問題(宮坂担当分)  
参考書などの持ち込み不可。  

次の質問に答えなさい。解答用紙に書いたものを終了後、提出すること(出席点の資料とする)。
<授業中に、正答を解説。各自採点したものを出席点とします>  

@・ 言語をもちいた人間のコミュニケーションは、言語的発話にかぎらない。
  そこでは、相互作用をおこなう人々が、どの程度、近づいているか、
  どのように空間に定位しているかも、などの現象もコミュニケーション理解の手がかりになる。
  こうした側面を研究する分野を・・身体動作学 kinetics, 近接学 proxemics,
  カイロプラクティク chiropractic, エミックス(イーミックス)emics という。  

A・言語の変化と変異の展開を研究する分野は――エスノサイエンス(民族科学)ethnoscience,
  共時的言語学  synchronic linguistics, 歴史(通時的)言語学 historical (diachronic) linguistics,  
  記述言語学 descriptive linguistics, 構造言語学 structural lingusitics である。

B・精神−観念論的ともいわれる文化理論にたつ学派は、文化を――
  抽象として/人々の精神に宿る規則や規範や標準の系として/
  観察される役割や行動の体系として  とらえる。

C社会が存在する意味(すなわち、秩序、生物学的な子孫再生産、資源物資の配分・供与)を
  維持することは、つぎのうちどれの 機能的要件なのか――
  理想文化の維持/文化的普遍性/社会の生存/文化変化

D次のどれが、「文化」にとって重要な基準となるか――
  食物を共有して分ける行為/言語/接触やマウンティングの存在 /家族の背景

Eラドクリフ・ブラウンが有機体の比喩をもちいて社会を考えたが、それは――
  文化の諸規範/言語における象徴/自文化中心主義/機能主義
  について、考えるためである。  

F社会的制度とは――
  特定の関心焦点をめぐる手続きの網目/社会の成員たちの再配置に必要な機構/
  家族をこえるもっと大きな社会構造で、教育がその例/上記3の解答はどれもあてはまらない  

Gある社会構造においての社会的位置、社会的アイデンティティとは――
  社会的諸制度/地位/役割/威信

H内的社会移動や競争、個人主義が特徴的にみられる社会が強調するのは――
  威信と従属/帰属的地位/穫得的地位/生まれながらの諸権利  

Iパーソナリティとは――
  個人の特定の身体的諸特性に対してあたえられる文化的意味/
  環境の特性に関わってみられる個人の特性/個人の特定の社会的経験のこと/
  上記の3のどれもをあわせたもの 

J成人の行動パターンを早期の子ども期にうけた条件付けの過程と考えるなら、それは――
  文化化/文化変容/特異的な訓練/母の支配的養育  とよばれる。

人間科学諸領域D 03年12月17日施行・期末理解試験問題(宮坂担当分)  
参考書などの持ち込み不可。
(授業中に、正答を解説。各自採点したものを出席点とします。)

人間科学諸領域D(担当:宮坂)小テスト  2003年12月18日

(a) そこで行われる行動にすべて開放性という特徴が認められる場合、それは、
  {芸術、神話、遊び、儀礼}を定義する第一条件をなす。

(b)神話は行為への示唆をもつと言う場合、その意味するところは、次のどれか。
  神話は、{過去の行為を正当化する、現在の行為の説明を与える、
  未来の行為を引き出す、以上の3つのすべてをおこなう}

(c) 次のどれが、儀礼の定義としてはあてはまらないか。
  {反復される社会的実践行為、毎日の社会的定型的行為の領域から切り離す、
  宗教的指導者の必要性によって作り出される、 しばしば神話のなかに埋め込まれた
  諸観念に密接に結びついた象徴的行為がみられる}

(d) 次のどれが、通過儀礼の諸段階をなすか。
  {分離・変換・再適応、分離・移行・再統合、移動・再革新・再統合、コミュニタス・境界性・周縁性}

(e) ローレンツ博士のビデオの復習もかねて

  以下には、「動物行動学 ethology」の簡潔な説明がかかげてある。
  これを簡潔に 取捨すれば、この用語の簡単な定義がえられるともいえよう。
  ただし、{ }内にいくつかの選択肢があるので、どの選択肢が適切かを考え、
  その選択肢を解答用紙に、選択肢問題順に書いてゆくこと。

  動学は、同じ種の動物個体間の a{縄張り争い;相互行動;営巣;あいさつ}の観察を出発点とする。
  観察の単位は、いったん はじめられたら次々に連鎖をなして終わりの行動までいたる過程全体、
  すなわち b{食物連鎖;相互連鎖;行動連鎖;循環連鎖} であるが、なにがその連鎖をなすかは、
  試行錯誤による観察を へてから確定される。動物行動学で注目する行動は、あいさつ、なわばり、
  c{順位;毛づくろい;えづけ;威嚇}
、つがいなど、個体間の関係をあらわす行動であり、その意味では、
  まさに社会的行動に注目しているのだ。 ただし、調査者である人間と動物とは現時点では言葉を交わす
  ことはできないし、霊長類がもちうるとされる彼らの行動の主観的意味づけも不明である。動物の行動は、
  結局、個体維持、種の保存という個体や種にとっての適応的機能に照らして理解される。
  動物行動学における観察法は、結局、生物学の理論を不可欠とし、この意味で理論と観察は独立して
  いない、ともいえる。 また、動物の進化系統研究にかかわる生物学・解剖学などの理論に照らしながら、
  異なる種を比較することで動物行動の進化の理論を つくりあげることも、動物行動学の目的である。
  比較研究からの発見の一例をあげれば、ある種にみられら行動と観察上はほとんど同一の行動が、それ
  とは別の近い種(進化の度合いの高い種)ではその行動の見かけ上の機能を失っている例が発見された。
  その場合、行動のd{退化、拡散、複雑化、象徴化}がおこったと、動物行動学ではいう。
  人間社会の研究のためにも、動物行動学の知見は重要な意義がある。とく進化の程度が近い霊長類の
  社会における動物行動学の成果を使って、人間社会や個人間行動に照らしあわせることで、人間理解の
  視点をひろげて ゆくことができよう。この意味で、動物行動学は e{人間科学;行動主義心理学;
  社会システム論;ニューサイエンス}
の重要な関連分野であるといえよう。

 

補講等について
 

12月20日に、W・ヘルツォーク監督の映画『フィツカラルド』を他者の表象というテーマに関連させて
みてもらいました。
要望があれば、もう一回このような機会をもうけます。

 

2003年度学年末試験について

本年度は、試験期間中に筆記テスト(60分)とします。
持ち込みは、自筆ノートのみ可。配点は全体の60%の予定です。

年度によっては以下のようなレポート課題のときもありました。   
人間科学諸領域D:学年末レポート  (担当・宮坂)    

以下の課題〈A〉〈B〉について、それぞれ、A4レポート用紙2枚程度で論じなさい。    
  手書きによるもので提出、(ワープロ使用後、手書き清書すると考えてください)    
  学事センターの定めた期日に学事センターに提出     
  氏名、所属専攻、学年、学籍番号を必ず、明記

課題〈A〉  狩猟採集民についての民族誌的報告をよみ[たとえば以下の参考書の(1)ないし(2)]、
  (i)それを例として「小規模社会」の特徴をあげなさい。
   その際、自然環境への適応にともなう社会組織・文化の相互関連のありかたや特徴
   という点に注意して論ずること。 
  (ii)未開、という用語をつかわず、「小規模」という用語をつかう理由について述べ、
   小規模社会が現代世界において存続する意義や展望について自分の意見を簡潔に述べなさい。

課題〈B〉  次の問題から1題を選んで、A4版レポート用紙2枚程度[手書き清書]にまとめて論じなさい。  
  〈B−1〉妖術がみられる社会の特徴について、グリッド・グループ理論から説明し、同理論の概要を
   解説・論評 しなさい。
   ビグミーのような狩猟採集民社会がどの類型に属するとみられるのかも、必ず明記すること。
   参考書は以下の(2)および、(1)  
  〈B−2〉小規模社会における「交換」も特徴と機能について論じなさい。参考書(3)  
  〈B−3〉現代消費社会における「儀礼的なるもの」について例をあげながら論じなさい。
   参考書(4)および1月17日の講義  
  〈B−4〉現代社会において芸術のもつ意味・機能について論じなさい。

参考書:(1)伊谷純一郎編『自然社会の人類学』アカデミア出版会、
   C・レヴィ=ストロース(川田・渡辺訳)『現代世界と人類学』サイマル出版会、
  (1および2)C・ターンブル(幾野訳)『森の民』ちくま書房、
  (2)M・ダクラス(江河訳)『象徴としての身体』紀伊国屋書店、
  (3)B・マリノフスキー『西太平洋の遠洋航海者たち』中央公論(世界の名著)、
   山口昌男『文化人類学への招待』岩波新書、
  (4)ターナー・山口編『見世物の人類学』三省堂、 
   岩波・文化人類学講座第9巻『儀礼とパフォーマンス』岩波書店、
  (5)その他、『20世紀思想辞典』三省堂、および、三田『哲学別冊・文献案内1998年』の
   人間科学諸領域Dの欄を参照。