パソコン電源の修理

こちらから,上位インデックスに戻ります。

動作が不安定なデスクトップ・パソコンの電源を修理して,安定に動作するようになった体験談です。似たような症状を抱えた古いパソコンをお持ちでしたら,廃棄する前に修理を検討してみるのもよいと思います。また,修理までの過程で調べたちょっとした知識なども載せています。

2000年に購入したデスクトップ・パソコンが,購入後5年を経過した辺りから,異常動作が目立つようになりました。この頃にはセカンドマシンとして使っていましたので,業務への直接的な影響はありませんでした。
「異常動作」とは,例えばマウスを認識しなかったり,キーボードのキーを普通に叩いても「押しっ放し」にしたような動作になったりしました。いつも発生するわけではなく,発生する状況に規則性も感じませんでした。パソコン・メーカーのアドバイスから,使わないソフトは削除するなどしました。ウィルス起因でもなさそうでした。症状は次第に深刻化して行き,2008年に入って,とうとう立ち上がらなくなりました。 OSの読み込み時に,処理が重くなるとハングアップする症状です。しかし「セーフモード( Windows(R) の動作上,必要最低限度のドライバなどだけで動作させるモード)」では動作しました。普通に立ち上げようとすると,立ち上がらないわけです。

パソコンを購入して8年が経過した先日,パソコン・メーカーに問い合わせたところ「ハードウエアのサポートは8年間で,期限切れ」とのことでした。この回答から,私は「サポートしてもらえないのなら,ユーザーが手を加えても構わない」と考えました。

私は,以前から電源を疑っていました。調べてみると,パソコンの電源は,出力平滑回路の電解コンデンサが劣化しやすいそうです。劣化すると,パソコンの動作が不安定になるそうです。品質の悪い電源は,電解コンデンサが膨張したり破裂する場合もあるそうです。「電解液は,有毒で腐食性がある」と聞きますから,破裂するようなコンデンサは使わないことです。日本企業のコンデンサであれば,このようなことは無いそうです。大抵の劣化の症状は,静電容量が減少することは無く,等価直列抵抗値(ESR)の上昇のような形で現れるそうです。ですから,静電容量を測っても良否判断はできないわけです。私の場合も,静電容量は正常でした。

私の電源は「ATX電源」と呼ばれる規格品であり,複数のメーカーが供給しています。ですから「電源だけを購入する」方法もあります。色々調べてみると,サードパーティーの電源には表示ほどの電流供給能力の無い製品や,数年で壊れる粗悪品もあるそうです。電源を買い換えると,「粗悪品を掴まされる可能性」が出てくるわけです。また古いパソコンのATX電源には,ISAバスへの供給から-12[V]や-5[V]が必要な場合があります。現在では,これらを持っていないATX電源が多くなっています。しかしパソコンによっては,これらの電圧をチェックしていて,-12[V]や-5[V]が無いと動作しない製品があるそうです。更に,最近の電源は大容量化から「ファンの取り付け位置」や「電源配線」の本数やその長さや「配線ごとの電流容量」などが様々で,しっかり確認して購入しなければなりません。これらを確認すると,案外選択肢が少ないことが分かります。

そこで私は,「電源を買い換える前に,電源を修理してみよう」と決めました。早速パソコンのケースを開いて,通電して電圧を確認しましたが電圧は正常でした。更に分解して,ATX電源を取り出して,電源基板を調べました。外観上は,何の問題もありません。「劣化しやすい」とされる電解コンデンサは,全て日本企業製で6個ありました(3300[μF]×1個, 1200[μF]×5個)。コンデンサ・メーカーのデータシートで確認すると,いずれも105℃で,ESRの測定周波数が100[kHz]で「超低ESR」などをセールスポイントにしています。この種のコンデンサは,秋葉原の小売店で入手できます(通販でも入手できます)。私は,私のATX電源に実装されていたコンデンサよりも,更に性能のよいコンデンサが入手できました。各種1個ずつ予備を購入して,1500円でおつりが来ました。

該当するコンデンサ6個を全て交換しました。電源を入れると,これまでの不安定な症状が嘘のように消え,スイスイ動作するようになったわけです。結果として,パソコンやその電源ユニットを廃棄せずに済みました。廃棄にも手間がかかります。パソコンを購入すれば,使えるようにインストールや設定など,ここでも手間がかかります。修理にも手間はかかりますが,パソコンの分解が初めての私でも数時間程度です。同じ手間をかけるなら,修理に手間をかけたほうが得策であるように感じました。このことは,中古パソコンについても言えるのだろうと思います。「電源劣化起因での動作不安定」の恐れです。これもコンデンサを交換すれば,解決できるかもしれません。またパソコンの電源は,不必要に入れっぱなしにしないことでしょう。コンデンサの劣化を早めることになります。

スイッチング電源の出力平滑回路のコンデンサの動作条件を考えてみると,かなり厳しい動作条件であることが分かります。スイッチング電源の高周波化から,コンデンサを通じるリプル電流が大きくなります。パソコンの高性能化から,電源も大容量化しており,コンデンサを通じるリプル電流も大電流化しています。リプル電流はESRで熱に変換され,コンデンサを劣化させます。このようなメカニズムから,数年のような比較的短期間で劣化が進むものと思われます。粗悪なコンデンサであれば,コンデンサ自体の発熱により短期間でガスが発生し,ケースの膨張や破裂に至るのだろうと思います。コンデンサの選定では,無名のメーカーで安価なものは避けたほうがよいでしょう。有名メーカーの製品でも,全部で数千円もあれば買えるわけですから。

現在のパソコンの性能は,多くのユーザーが満足し,耐久消費財的な道具に変わってきています。ハードディスクなどの磨耗故障が存在する部品を除き,例えば半導体の信頼性は十分高くなっています。このような背景から,「コンデンサの交換」を覚えておくと,お手元のパソコンを長く使うことができるかもしれません。しかし,ユーザーがパソコンに手を加えればメーカー保証は受けられなくなりますから,それを覚悟での手段です。他に,電源やハードディスクなどは,標準規格が変わってきています。古い規格の製品は,入手が難しくなる状況があることを付け加えておきます。

なお,私はコンデンサ交換作業は承っておりませんので,あしからずご了承ください。。。

2008年9月20日
こちらから,上位インデックスに戻ります。

本ホームページの文章・波形データ・図などの無断転載を禁止します。
(C) 勝部雅稔 2008