アナログ回路設計の世界 |
こちらから,上位インデックスに戻ります。 私は、アナログ電子回路設計に軸足を置く技術者です。そんな技術者目線で、アナログ回路の世界を紹介します。
■ アナログ回路設計はアウトドア!
とは言え、物理現象は自然界の法則に必ず従います。「不都合な動作」には、必ず「そうなる理由」が潜んでいます。
■ アナログ技術者がいない・育たない
技術者には、物理現象を定性・定量の両面でイメージできる資質が求められます。またその物理現象は、いくつも考えられます。
アナログ技術者は、日々その技術に接している必要があります。しかし現在にあって、そのような環境が継続的に与えられる企業は少ないと思います。
■ アナログ技術者はアイデアマン! 設計課題には「満たすべき要件」があり、これを達成するための「作戦(手段)」としてアイデアが必要になります。この時点で具体的な回路案はなく、まだ動作イメージの段階です。この動作イメージの段階で、新規性のあるアイデアが出て来ることが多くあります。 動作イメージが決まると、具体的な回路構成を考えます。この回路構成は、まだブロック図やシグナルフローの段階です。 回路構成が決まると、具体的な回路図にしていきます。大抵は複数の回路案が出てきますから、ベストな手段を検討して最終回路に仕上げます。
大雑把には、このような感じで回路設計をします。
このように設計した回路は、「2つと同じモノが無い」と感じています。この背景には、「何かしらの性能を際立たせるとき、そこにはオリジナリティーが不可欠になってくる」ことがあると思います。
■ ツールは数学 計算は、性能の予測や、部品定数の決定などで用います。 その計算量は、100を超えることが珍しくありません。私は便利さから、表計算ソフトをよく使います。1つのセルが1つの計算で、これが100セルを超える計算量になると言う意味です。
この計算に決まった手順や方法は無く、動作イメージの中で計算を組み立てていきます。
計算上で問題が無くなると、試作などによって必要な確認を行い完成します。
■ こんな回路にご用心! 私は、問題を抱えたアナログ回路の調査・改修をいくつも経験してきました。そのほとんどが「作業の尻ぬぐい」でした。
作業で作成された回路に、設計者に求められる「深い考察・理解・検討」や「工夫」は期待できません。 これらが放置される理由に、「直ちに不良症状が現れ難い」と言う問題があります。既成回路のつなぎ合わせでは「それなりに動作する」ことが多いため、問題に気づき難いのです。不幸にも問題が露呈すると「出荷済み製品への対応」「基板の改版」など、余計な仕事・費用が発生します。
またこのような回路の性能は、「既成回路任せ」なので性能が良くないのが一般的です。性能面で工夫が無く、管理されていないためです。
■ 実施事例
現行の計測器があり、この高性能版である新製品開発での話です。
完成した新製品では雑音性能が大きく向上し、現行機種の1/400になりました。この400倍の差が、設計と作業の違いです。
この案件で私がイメージした作戦は「センサと差動ADC(Analog to Digital Converter)の直結」でした。現行機種は、センサとシングルエンドADCとの間に複数の信号処理回路があり、この回路構成が性能を損ねていると見積もったからです。
■ アナログ回路設計はハードジョブ
前出の100セルの計算は、1つの回路当たりの計算量です。大抵は複数の回路案を検討しますので、数百セルの計算量ということになります。
こんな仕事で集中力が維持できる設計時間は、1日せいぜい5時間程度です。
では、また
2021年3月27日 |
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