5/4 博物館めぐり @「紫禁城写真展」
日記 08’5、4

上京中日、めぐった博物館展示の感想です。


最初に行ったのが東京都写真美術館の「紫禁城写真展」。

100年前に日本人カメラマンが撮った紫禁城の写真の展示です。
05年に撮られた写真と並べて過去と現在が比較できるようになっていたりして、
数は少なめでしたけど、なかなか面白い展示でした。

見に行った方の感想で聞いていたのですが、100年前の紫禁城は、確かにすごい荒廃ぶり。
100年前といったら西大后の晩年で、戊戌の変とか義和団事件とか動乱の真っ只中でしたから、
調度品は略奪されて空っぽだし、障子も戸も破れてるし、屋根も広場も草茫々。
普通なら「幽霊でも出そうな」というところですが、あまりにも規模が大きすぎて、そういうふうには思いません。
たまに1人2人写ってる人間のちっちゃいこと・・・
幽霊が出るには空間が広すぎて、情念が拡散して希薄すぎます。

でもなんだか見覚えがあるなぁ・・・この雰囲気は・・・

埋立地?

ああ、そうだよ、平地にあるから、広場の向こうに何にもなくてすぽーんと空間な所とかさ。
小山のような建物を砂利の山に見立てれば、重機が入ってこないはじっこの方に
ニガヨモギやススキのような丈の高い雑草がぽつぽつと、しかしがっちりと生えてる感じとかさ。
夕方の少し肌寒い風の冷たさとか、はじっこで仮面ライダーが戦ってたりするあの感じさ。
つまり、あまりにも空っぽに荒れ果ててるってことですが。

創建当初の紫禁城は目も眩むばかりのきらびやかさだったはずなのに、
100年前はこの荒れよう。
現在の中国は羽振りがいいので、紫禁城はきれいに整備されていて、
観光名所としていっぱい人が訪れて、繁栄を謳歌してます。
しかし、満ち潮の繁栄のあとにひっそりと、でも確実に、引き潮のこの壮絶な荒廃はついてきている。
栄枯盛衰です・・・


展示には古いカメラなどもありましたが、基本は写真展なので、写真を見ながらいろいろ考えました。

日本はぼろっちいのが好きで、「神寂びる」なんて言葉まで作って愛でたりします。(宗教施設の話ですけど)
でも紫禁城は、ぼろっちくなっても神々しくはなってはおらず、ただ単に荒れてるように見えます。
それに、建物の年数はかなり古いはずなのに、歳経て古くなったというよりも、
新しいものがボロくなったように見えます。(あくまで私見ですが)

何がそんなに違うのかなぁ。
石造りだから? 屋根が瓦だから?
やっぱり森に包まれてないってことが大きいのかな・・・
(日本の場合、周りが緑滴りさまざまな花が咲いてる極彩色なので、
建物が鮮やかだと、かえって自然の色に埋没して目立たないらしいです。
中国は基本周りは黄土か草原なので、建物は鮮やかでないとどうしようもないらしい。)

う〜ん。

それから建物の話と離れますが、日本は何でも取っておく文化だといわれますが、
それにはサイズが関係してるような気がします。
ろくろが入ってきても手捻りが残ったり、磁器が入ってきても陶器が残ったり、
トランジスタが発明されても頑固に真空管作ってる職人がいたりする、
世界的に見ると日本はかなり異様な文化です。
・・・なんですよ。
言われないと気がつかないけどね。

もしかしてこれは、コンパクトだから取っとけるんじゃないですかね。

「これもう要らないけど、まぁ、とりあえずポケットに入れとくか。」で取っとけるサイズ。
コンパクトだから、取っておくのにそれほどの労力が要りません。
紫禁城を見ていると、このサイズのものがいらなくなって古びても、簡単に取っとくわけにいきません。
というか、このサイズで古びてくることを考えると気が遠くなります。
取っておくにも金がかかるのに、こんなに無駄金払えない・・・
潰して建て直すのも難しいかも。そのまま捨てるしかないよなぁ。

良いものはでっかく派手にどーん! と作るのが中国流。
こういう宮殿を建てるときは上り調子の最盛期だから、金に糸目をつけずとんでもないもの作るけど、
その後の停滞と下降線の中でも維持管理をしなきゃならんのです。
でもそれは計算に入ってない・・・
まぁこれはどこの国も同じようなもんですが。

それに、中国のサイズで新しい技術が入って定着し、その速度で社会が回りだした場合、
その技術がなければ生活できないのじゃないですかね。
日本人が中国旅行すると、みんなが1度や2度は引っかかって苦しむ中華イリュージョン。
3ブロック先の見えてるビルに行こうとして、歩いても歩いても歩いてもたどり着かずに遭難しかけるあの現象。
何でだ。見えてんのに(ハァハァ)。
(答:1ブロックの距離が日本の常識を超越してるから)
この距離感でみんながバスで移動する社会になったらば、
「俺はいやだ、歩いていく!」と言ってたら、とても生活できません。
でも日本のサイズなら、「歩いてく!」といっても、
本人の努力であんがい何とかなっちゃうかもしれません。

いろんな要素がごっちゃになって語られているのでまとまっていませんが、
まぁこう、全体的な考え方としてね。


ああでもさぁ、昔の紫禁城のようなもの、
今現在ではきっと道路や港湾施設などのインフラや、ビルや住居などですよね。
中国が今、ものすごいサイズと距離のものを、ものすごい勢いで一気に作っているのが、
30年から50年後には一気に古びるんですよね。
コンパクト日本でさえも高度成長のツケがまとめてきて作り直しに苦しんでるのに、
中国ではあの壮絶なサイズのものが古びる。
というか、壮絶なサイズのものは維持管理するのにも壮絶な金がかかるのに、
あれらを全部もたせるのか・・・何もかもが壮絶だぁ・・・


と、写真を見ていただけでいろんなところに思考が広がって面白かったです。
あんまり内容と関係ない思考も多かったけど(笑υ)


うう、長くなってしまったので、ここでひとまず上げ。
次のところの感想は、また明日です。