アフリカの農業・食料生産、バッタが追い討ち、FAOが緊急援助要請

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.7

 国連食糧農業機関(FAO)が5日、バッタの大群が北西アフリカを侵略しつつあると、駆除のための緊急国際援助を要請した(Locust swarms invade West AfricaExtremely critical situation in Northwest Africa - international assistance urgently needed to avoid a locust plague)。

 砂漠バッタの群が、最初の繁殖地である北アフリカからいくつかの西アフリカ・サヘル諸国、とくにモーリタニア、セネガル、マリに移動している。さらに、数週間でニジェール、チャドにも達するだろうという。サヘルは雨季に入っており、繁殖地域がこれら地域にも広がる恐れがある。来るべき数ヵ月の作物生産が重大な脅威に曝されている。砂漠バッタの大量発生は87-89年以来の規模に達しており、有効な防除法は殺虫剤散布しかないが、そのための資金が欠乏しているという。

 実のところ、FAOは既に4月、懸命な防除活動にもかかわらず、西・北西アフリカの砂漠バッタの脅威が極度に深刻化していると警告するとともに、春から夏にかけて現在の防除活動を続けるには、さらに1,700万ドルが必要になると訴えている(Locust threat in Northwest Africa extremely serious,4.27)。このとき、FAOバッタ情報オフィサーのケイス・グレスマン氏は、「モロッコとアルジェリアのアトラス山脈南部の春季繁殖地で産卵・孵化・群形成が進んでいる」、「この10年で最も深刻な状況」だと言い、次のように説明していた。

 「モロッコで栽培され、ヨーロッパや北米に輸出される4億ドル相当の柑橘類が来るべき数ヵ月のうちに危機に曝される。モーリタリア北部とニジェールの一部にも大群がいる。繁殖地域の多くは遠隔地に分散しているから、すべてを発見し、退治することは難しい。モーリタニアとニジェールでは利用できる財源が不十分であり、他の国でも資金は急速に干上がっているから、事態はますます悪化する。今までにモロッコの20万ha近くの繁殖地域で防除活動が行われ、アルジェリアでは、西はモロッコ、東はチュニジアとの国境の広大な帯状地域で産卵する群との戦いが進行中である。

 4月初めには、群の一部がモロッコからアルジェリアを通ってリビアまで移動した。ここでは3,700haに薬剤が散布された。チュジア南部でも同様の繁殖がある。モーリタニアでは北部で新たな群が形成され、ナツメヤシ、ソルガム、オートが被害を受けてきた。財源欠乏で防除は進まず、現在までに1万800haが処理されたにすぎない。昨年10月以来1,700万ドルが支出され、140万ha近くに薬剤が散布された。この資金の大部分は当事国の国家予算から供給された。

 FAOはモーリタニアとモロッコの緊急プロジェクトに80万ドルを供与、ディウフ事務局長は最近、FAOの貢献を倍増することを決定、アルジェリア、チャド、ニジェール、スーダンへの支援を追加する。EU、イタリア、ノルウェー、米国などからの供与は今までのところ500万ドルである。モロッコとアルジェリアは農薬・車・設備・専門家でマリ、モーリタニア、ニジェールを支援、サウジ・アラビアはスーダンに大きな援助を提供した。だが、春の間の現在の活動を続け、これを夏の間の西アフリカ・サヘルの繁殖地域に拡大するには、さらに1,700万ドルが必要と見積もられる」。

 今回の要請は、このような防除活動がほとんど成功しなかったことを意味する。北西アフリカ諸国の農業・食糧生産は、砂漠化・干ばつ・時折襲う大洪水で危機に曝されてきたが、これにバッタの大群がさらに追い討ちをかけることになる。

 砂漠バッタは、通常はモーリタニアとインドの間のおよそ20ヵ国に、非常な低密度で生息するにすぎない。ところが、環境条件に応じて行動は大きく変わる。降水により繁殖に好適な条件ができると急速に増殖し、大発生、成虫の群を形成する。群は高度な移動性をもち、夏、冬、春の繁殖地域間を数百キロ、数千キロも飛ぶという。このバッタは、毎日自分の体重と同じ量の食物を食べ、一つの群で数千人分の食料を食い尽くす。行く手の作物を手当たり次第に襲い、作物被害は、まさに破滅的である。昨年のアカデミー賞・最優秀外国語映画賞を受賞した「名もなきアフリカの地で」を観た人は、その恐ろしさを実感したであろう。

 今回の大発生は、昨年夏の例外的大雨が引き金を引き、さらに10月の例外的降水が拍車をかけたという。前回の大発生は87-89年、3億ドルを注ぎ込んで終結するまでには数年がかかった。大部分の国の牧草地、ナツメヤシ、穀物、野菜などの作物被害が報告された。FAOは、このような規模の大発生になると、殺虫剤使用によってしかコントロールできないという。