外国農業・バイオ燃料ビジネスに蹂躙されるタンザニアの肥沃地 

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.10

  East African Business Week(EABW)が、タンザニアでバイオ燃料・食料生産のための新たな農地争奪が始まったと伝えている。ターゲットはインド洋沿岸部や北部、南部の肥沃な土地で、広大な農地が外国企業の手に落ちつつある。 

 Biofuels cause land scramble in TZ,East African Business Week,2.7
 http://www.busiweek.com/index.php?option=com_content&task=view&id=1022&Itemid=1

 タンガからムトワラまでの1000kmの沿岸線は、既に外国企業が直接取得するか、多国籍企業のために働く裕福なタンザニア人の手に落ちた。

 EABWは、ダル・エス・サラーム市の中心部から40kmほど北のバラモヨ県の状況が急を告げているのを発見した。最近、農業・食糧安全保障省の専門家が計画案を拒否したにもかかわらず、広大な土地がバイオ燃料生産のためのサトウキビ農業への投資家に与えられた。

 同じコースト州のムクランガ県では、スウェーデンのセカブ(Sekab)社が80万fのバイオ燃料原料植物栽培用地の譲渡を求めている。地方当局によると、同社はこのプロジェクトに4億ドルを投資する。

 英国のブリティッシュサン・バイオ燃料社も、バイオ燃料プロジェクトのために同県で少なくとも3200fの土地を取得しようと競っている。同じ州のキサラウェ県でも同様だ。一企業がヤトロファ栽培のために3200fの土地を取得した。既に県当局が承認している。

 バイオ燃料だけではない。アルーシャでは数千エーカー(1エーカー=0.4f)が花卉・コーヒー・アロエベラ農業投資家に与えられ、地方民が土地なしになった。地方民は彼らの土地で労働者にならざるを得なかった。コースト州ルフィジ県でも、タンザニア政府に食料作物を生産すると約束した外国企業に数千エーカーが与えられた。このプロジェクトの承認は、数千の村人が土地から追い払われることを意味する。

 こうした土地の一部は、大統領直属の半官半民改革委員会(PSRC).を通しての公企業民営化の間に取得された。ムベヤ州の一例がそれで、ここでは、アジアの財界巨頭が米を栽培するカピンガ地方の7500fの肥沃な水田を支配している。彼は2006年、当局に大規模農業を営むと約束して、かつては政府が所有していた水田を購入した。

 政府がこの投資家に期待したのは雇用創出と、国内・輸出市場向けの食料生産の拡大だった。しかし、これは決して実現しなかったということだ。代わりに、彼は建制制類似の条件で土地を貸し付けている。民営化される前、この土地は地域の30万の村人の生計を支えていたという。


  自国の食糧安全保障を強化するために海外に巨大な農地を確保しようとする土地・水資源不足国の動きについては、”新植民地システム”につながる恐れがあるして、FAOが昨年中にもガイドラインを発表する意向を示していた。これはバイオ燃料のための農地確保にも当てはまる。しかし、FAOのガイドラインは未だに出ない。金融危機で公的開発援助がますます細るなか、途上国政府のこのような投資への期待が高まり、厳格なガイドラインへの反発が強まっているからではないかと推測する。

 しかし、とりわけアフリカ貧困国の”新植民地化”を防ぐためには、もはや一刻の猶予も許されないところにきていないだろうか。