アフリカ大陸  乾燥で2050年に可耕地半減も 灌漑よりも乾燥に耐える家畜が重要

農業情報研究所(WAPIC)

09.6.4

  ナイロビの国際家畜研究所(ILRI)と英国のWaen Associatesの研究者が、アフリカの耕作可能地が今後40年の間に大きく減少するという新たな研究を発表した。この研究によると、2050年までに、乾燥条件下に置かれる”限界農地”が、現在のアフリカ大陸の耕地の4分の1から半分にも相当する50万㎢(5000万f)から100万㎢(1億f)も増える。食料生産増強のために灌漑農地を拡大する計画があるが、将来の食料安全保障の鍵を握るのは、作物よりもずっと厳しい暑さと乾燥に耐えることができる家畜ではないかという。

 この研究は、気候変動に関する新たな世界協定が、どのようにしたら貧しい農村民に適応戦略を提供できるかをテストするために行われた。既に降水不足による干ばつ被害が頻々と起きている西アフリカ、東アフリカ、南部アフリカの”限界地”や乾燥・半乾燥地に焦点を当てたこの研究によると、世界の炭素排出削減で気候変動が穏やかに抑えられた場合でさえ、多くの農民が作物生育条件の重大な悪化に直面する。

 これら地域の信頼できる生育期間が90日以下に落ちれば、既に限界的なトウモロコシ栽培はノーマルな農業活動とはなり得ない。一部地域では、ミレットなどの干ばつに強い作物も、降水不足で生育が難しくなり[ましてコメなど論外だろう]、食料自給や所得を維持するためには、乳や肉のような家畜産品が決定的に重要になる。

 これら地域では、家畜産品への市場の需要も増えるだろう。農業システムへの一層の家畜の追加は、貧しい家計に気候変動のリスクに対する盾を提供するとともに、動物産品に対する需要の増加から利益を得ることも可能にするという。

  Peter G. Jones and Philip K. Thornton,Croppers to livestock keepers: livelihood transitions to 2050 in Africa due to climate change
,Environmental Science & Policy Volume 12, Issue 4, June 2009, Pages 427-437
  Climate Change Models Find Maize, Millet, Other Staple Crops Face Ruin On Up to One Million Square Kilometers of African Farmland,ILRI,6.3
 http://www.ilri.org/ILRIPubAware/ShowDetail.asp?CategoryID=TS&ProductReferenceNo=TS%5F090603%5F01

 サハラ以南アフリカの農地拡張の余地は大きいといった主張(川島博之 「世界の食料生産とバイオマスエネルギー」 東京大学出版会 2008年)は論外だが、日本政府が音頭を取るアフリカの米生産倍増計画も有効性が疑われる。 アフリカに大量の農地を取得することで自国の食料安全保障を確保しようとする世界の動きにいたっては、”クレージー”とでもいうほかない。