アフリカの食料安全保障 G8もオバマも間違っている―アフリカの一見解

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.17

 G8サミットは、アフリカ諸国が自身の必要とする食料を生産し、輸入食料依存を減らすことを助けるための200億ドルの援助を約束した。オバマ米国大統領は、これが効果を生むためには、良い統治、民主制が不可欠と強調する。しかし、アフリカ諸国は、それで貧困から抜け出し、食料自立を達成できるのか。アフリカ紙が掲載したアフリカの一見解を紹介する。

 Obama wrong on Africa food security,Business Daily(Kenya),7.16
 http://www.businessdailyafrica.com/Opinion%20&%20Analysis/-/539548/624574/-/u13f47z/-/index.html

  先週、G8サミットがアフリカの食料安全保障を強化するための資金提供を誓ったのち、バラク・オバマ米国大統領がガーナを訪れた。しかし、アフリカ人は、西側がアフリカ農業に向けた自身の政策を変えないかぎり、なお外国への食料依存を続けるだろう。

 米国大統領としての初のアフリカ訪問に際し、オバマ大統領はガーナ議会での演説で、アフリカ大陸が貧困から脱出しようというのならば、良い統治、民主的慣行、正しい政策が重要だと強調した。

 その直前、イタリアでのG8サミットは、アフリカの食料安全保障を強化し、諸国が食料の援助や輸入に頼る代わりに自身で食料を生産するのを助けるための200億ドルのプログラムに合意した。

 オバマ大統領は、記者会見で、ケニアと韓国を比較し、両国の一人あたり所得はかつて同じだったが、ケニアは貧しいままにとどまり、韓国は経済大国の一つになった[そして、世界中の農地買い漁りに乗り出すにいたった―農業情報研究所]と言った。

 その意味するところは、韓国のような東アジアの国は、良い統治と民主制があったためにうまくいき、アフリカ諸国は非民主的慣行と悪い政策のために遅れたということだ。

 G8サミットとオバマ大統領の仮定は、限られた程度においてのみ正しい。たとえば、韓国の発展は、国が独裁体制下にあったときに離陸した。

 それは、アフリカが食料依存的になった理由を見誤っており、その結果、約束された大量の基金も、アフリカの食料安定確保を助ける機会をとらえるのに失敗するだろう。

 もちろん、良い統治と政策は決定的に重要な要素だ。

 しかし、アフリカと東アジアの発展のいかなる比較も、大部分のアフリカ諸国は、不幸にも世銀とIMFのコンディショナリティで強い影響を受けたが、東アジア諸国はこれと無縁で、自由に自身の政策を採択できたことを考慮に入れねばならない。

 多くのアフリカ諸国の農業の衰退は、IMFと世銀の構造調整政策のためであった。これらの国は[そして、未だに大量の米を輸入し・最近の世界米騒動の中心地の一つとなり・世界中に農地を売り出し、自ら「新植民地主義」を呼び込んでいるかのごときフィリピンも―農業情報研究所]、農産物販売ボードや生産者価格保証の解体、肥料・機械・農業インフラなどへの補助金や支援の段階的廃止や撤廃、食料品に対する関税の極度の低レベルへの引き下げを強要された。

 多くの食料作物の純輸出国か、自給国であったこれらの国は、国内生産の衰退と、関税削減のために安くなった輸入品の増加を経験することになった。

 輸入品の一部は、食料産品が手厚く補助されている先進国からのものであった。国内農民生産物は不公正な競争にさらされ、多くの場合、生き残れない。農家所得、人間の福祉、国の食料生産、食料安全保障への影響は厳しかった。

 ・・・・・・

 1970年代、ガーナの米生産は国内のすべての必要を満たすことができたが、2002年には国内供給の64%が輸入品だった。2003年、米国はガーナに11万1000トンの米を輸出した。同じ年、米国政府は、米に13億ドルの補助金を与えた。政府の研究で、米国米農民の57%が、補助金なしではコストをカバーできないことが分かった。米国白米の2000-2003年の平均生産・精米コストはトンあたり415ドルだったが、274ドルで輸出した。輸出価格はコストを34%下回る。

 ガーナと他のアフリカ諸国が直面している別の大きな問題は、今年調印が予定されている欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)である。EPAの下で、アフリカ諸国は、その80%の製品の関税をゼロに引き下げることを求められる。特に影響を受けるのが農産物である。

 従って、G8諸国が、真にアフリカの食料生産増強を助けようとすれば、200億ドルの基金は政策の変更を伴わねばならない。それなしでは、プログラムは成功しない。

 そして、アフリカが良い統治の欠如を責め続けられることになる可能性が一番高い。


 日本も同じ?そうではない。同じように見える政策も、国際開発・援助機関に強要されたものではなく、自ら選んだものである。それによって、国民も、腹がどんなに膨れ上がろうが決して棄てようとしない豊かな食生活を手に入れた。この食生活が危機に陥るかもしれない万が一の場合に備えて、海外農地の確保まで煽る者まで現れる始末だ。関税がどんなに引き下げれられ、生産者価格がどんなに下がり、食料自給力がどんなにそがれたとしても、これは民主政府と国民が自ら選んだ政策と食の結果であり、”良い統治”の欠如を責められることはあっても、アフリカとは大違いなのだ。