アラブ農業開発機関 アラブ諸国は食料自給を目指せ 一層の投資と農業開発を

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.30

 アラブ農業開発機関(AOAD)が、アラブ諸国は適切な農業開発戦略の実施を通じて食料自給を達成すべきとする研究を発表した。言葉の制約から原文を読むことはできないが、これに関する英文のマスコミ報道は次のように伝えている。

 Arab nations urged to take steps to halt food price rise,Enirates Business 24/7
 http://www.business24-7.ae/Articles/2009/7/Pages/29072009/07302009_c974662c71884f5b85cce650d71664eb.aspx

 アラブ市民の生活水準は、過去2年の食料価格高騰で大きく下がり、政府の対抗措置の欠如のために、貧困と失業が広がった。穀物や主要農産物の価格上昇は、世界金融危機の勃発以来一段落したが、以前に比べればなお高く、今後も高止まりが予想される。従って、アラブ諸国は、地域における農業ファンドの設立や戦略的食料備蓄の確立など、価格高騰の再来を防ぐ緊急措置を講じる必要がある。世界の大農業生産国が、世界食料価格上昇の主因をなしたエネルギー安全保障のためにバイオ燃料への依存を深める政策を追求しているから、世界最大の農産物輸入国であるアラブ諸国は、このような政策を欠けば、再び価格高騰の被害に見舞われる。

 過去2年の食料価格高騰は低・中所得の家庭や個人を直撃、食料消費だけでなく、保健・教育・その他のサービスに対する支出も減らした。価格の高止まりは、保健問題、一層の貧困、失業、その他の社会問題につながる。これは、大部分のアラブ諸国のインフレと貿易赤字の拡大にもつながる。それが、家族に対するさらなる圧力となる。

 こういうことになったのは、貧しい水資源と農業政策の間違いのために、アラブ諸国が世界最大の食料輸入国に転じたからであり、農業への大きな投資やその他の措置を欠けば、事態は一層悪化に向かうだろう。アラブ諸国は2005年、一層の投資と農地開発にかかわる2005-2020年共通農業戦略を承認した。アラブ地域には、5億5000万ヘクタールを超える広大な可耕地があるが、その12%しか利用されていない。しかし、この戦略は適切な農業政策と十分な基金がないことから有効に働かず、アラブ諸国は、その後かえって輸入依存を深めることになった。

 報告は、将来の価格高騰に対処し、妥当な価格で農産物を確保し、他の国からの農産物輸入を減らし、大部分の農産物の自給を達成するための緊急措置を提言する。

 これらの措置には、農業政策の改善、利用可能な耕作可能地の利用の改善、既存の国家農業諸機関の強化、アラブ共同農業ベンチャーと施設の支援、肥沃なアラブ諸国への投資、食料価格上昇を抑えるための有効な国家政策と戦略の採択、アラブ食料安全保障プロジェクトに資金を供給する汎アラブ基金の創設、戦略的共同食料備蓄の立ち上げが含まれる。

 この研究は、砂漠湾岸諸国のスーダン等、肥沃なアラブ諸国への海外農地農業投資を一層促す契機になるかもせいれない。