二つの病気がアフリカからバナナを一掃しつつある 3000万農民の生計と食料に危機

農業情報研究所(WAPIC)

09.9.2

 うち続く干ばつと紛争、食料価格の世界的高騰で飢餓の脅威に曝されているサブサハラ・アフリカの人々に、二つの破壊的バナナ病が追い討ちをかけている。これら病気がアフリカからバナナを一掃しつつあり、バナナを基本食料とするおよそ3000万の農民の生計と食料を、さらに脅かしているという。

 国際熱帯農業研究所(IITA)、南部アフリカ開発共同体(SADC)、FAO、国際生物多様性センターは先週、タンザニア・アルーシャで、関係国の専門家や国際的科学者など集めたワークショップ開き、どうしたら この病気の急速な拡散を防げるか討議した。拡散を防ぐ方法はありそうだ。しかし、実行は途方もなく難しいようだ。

 これら二つの病気とは、細菌性立ち枯れ病(Xanthomonas wilt)とバナナバンチートップ病(banana bunchy top disease、植物の頂から輪生の葉が出て発育が止まり、やがて枯死にいたる)である。どちらも昆虫の媒介で広がり、利用できる抵抗性品種はほとんどない。国際農業研究協議グループ(CGIAR)によると、前者はエチオピア、ウガンダ、ルワンダ、ケニア・タンザニア・コンゴ民主共和国の一部に、後者はエチオピア、ウガンダ、ルワンダ、ケニア、タンザニア、ガボン、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、アンゴラ北部、マラウィ中央部に広がっている。

 この病気は、農具や農業資材の共有や土壌浸食など、非常に多様な経路で拡散するから、封じ込めは非常に難しい。アルーシャの会合では、農業専門家は農民が農薬を使うか、抵抗性品種に変えるように要請した。CGIARは、畑からバナナを全部抜き取り、農薬で処理するか、植物を焼き捨てることを勧告する。

 しかし、これは貧しい農民にできることではなく、生態系も破壊する恐れがある。バナナは”母樹”から育つから、これを殺せば作物自体を失うことになる。巨大なバナナの木に農薬を散布するには大変な費用がかかる。

 ルワンダの一部地域の農民は、バナナを諦め、豆類やトウモロコシなどに切り替えた(ただし、これらはバナナより栄養価が低い)。しかし、東部の農民は、バナナが地域に最も適しており、他の植物はうまく育たないから、簡単にはバナナを棄てられない。

 コンゴ民主共和国では90%のバナナを失った地域もあり、紛争から立ち直りつつある人々の貧困レベルが上がっている。一部の村では、(栄養の少ない)キャッサバへの切り替えを余儀なくされたということだ。

  ・Two deadly diseases poised to wipe out African bananas, experts scramble to control them,CGIAR:Newsroom,09.9.1
 http://www.cgiar.org/newsroom/releases/news.asp?idnews=920

 ・Banana Could Be Wiped Out By Bacteria,Arusha Times 09.8.29-9.4 via allfrica.com
 http://allafrica.com/stories/200909010459.html

 ・Banana wilt spreads to 17 districts,New Times(Rwana),8.28
 http://www.newtimes.co.rw/index.php?issue=14001&article=19279

  ・Banana diseases hit African crops,BBC News,8.27
  http://news.bbc.co.uk/2/low/africa/8225588.stm
  ・Banana diseases threaten African crop,Reuters,8.26
  http://www.reuters.com/article/environmentNews/idUSTRE57P1OL20090826