ウガンダ 急速に姿を消す伝来作物 高収量で病害虫や干ばつ強くても売れない

農業情報研究所(WAPIC)

10.6.5

 ウガンダ南西部・ナカセケ県ナミタリ村の70歳の農民であるゴッドフリー・ムソケさん、1971年にアミン参謀総長の指揮するクーデターで大統領の座を追われながら、アミン失脚後の1980年に大統領に返り咲き、1985年にまたもクーデターで失脚したミルトン・オボテ元大統領についてはあまり知らないだろうが、彼の遺産の立派な継承者だ。

 彼は郡でただ一人、オボテの名で知られる黒豆の栽培している。この豆がどうしてオボテと名付けられたかは謎だが、彼は、「この豆は高収量で、多くの病気にも強い。干ばつのような厳しい条件のときでさえ、結構な収量がある」と言う。

 しかし、ほかの農民は、作っても売れないと、オボテを作るのを皆やめてしまった。調理すると黒いスープが出るので誰も買わないのだという。

 こんな具合に、農民が新しく、金になる品種ばかり取り上げるのために、おいしく、病害虫にも強い国中の伝来作物品種が急速に姿を消しつつあるということだ。

 まるで、耐冷・耐病・多収米育成という長年の悲願を達成しながら、売れないために棄てざるをえなかったかつての日本を見るようだ。

 Local crop varieties on verge of extinction,New Vision,6.5
 http://www.newvision.co.ug/D/8/26/721766

 アフリカを飢餓から救うためには、干ばつ耐性、病害虫抵抗性などの遺伝子組み換え作物が不可欠といわれる。しかし、伝来の作物の復活の方が先決だ。このままでは、これらの優秀な形質を受け継ぐ新たな作物品種を作り出すための遺伝資源さえ、早晩消失してしまうだろう。