バイオ燃料産業急成長で国際穀物価格が急騰ーFAO穀物生産見通し・食料情勢報告

農業情報研究所(WAPIC)

07.5.17

  国連食糧農業機関(FAO)が5月16日、最新の作物収穫見通しと食料情勢に関する報告を発表した。

 2007年の世界穀物生産は2006年に比べて4.8%増加、20億9500万トンの記録的レベルに達すると見込まれるが、総供給量は急速に成長するバイオ燃料産業により膨張する需要に追いつかず、在庫はこの20年間の最低レベルになりそうだ。

  最大の生産増加が予想されるのは粗粒穀物で、前年より7.1%増え、10億5100万トンになる見込まれる。粗粒穀物全体の7割を占めるトウモロコシの生産増加がこの大量の増加をもたらす。世界最大のトウモロコシ生産国・米国では未だ作付けが始まっていないが、トウモロコシを原料とするエタノールの生産のための例外的国内需要に応えるために、生産者は1944年以来最大の面積の作付けを計画しているという調査データがある。

 しかし、粗粒穀物、特にトウモロコシの利用も大きく増加する。粗粒穀物全体の利用は2.3%の増加が予想されるが、大部分はトウモロコシを原料とするエタノールを生産するための需要の急増のためで、それは2007/08年の粗粒穀物の工業利用を9%押し上げる。この増加の大部分は米国で予想されるもので、ここでは、トウモロコシ価格の上昇と原油価格の下落にもかかわらず、操業が始まるエタノール工場の増加のために、エタノール生産は今季も記録を更新することになる。飼料用利用は微増にとどまる。

 他方、小麦生産も4%増加するが、期初在庫が少なく、供給量は却って減少する(-0.4%)。そして、利用はトウモロコシのように大きく増加するわけではないが、食料用利用やとくにヨーロッパ、ロシアにおける飼料用利用の増加で多少は増加する。従って、在庫は大きく減少して最低レベルにはりつくことになる。

  かくして2006/07年の大部分の穀物の国際価格は、今までのところ大きく上昇、2008/08年も高どまりとなりそうだ。その結果、低所得食料不足国(LIFDCs)の穀物輸入経費は25%も上昇すると見込まれるという。

 Crop Prospects and Food Situation-No.3 May 2007
  http://www.fao.org/docrep/010/j9940e/j9940e00.htm

  バイオ燃料産業の急拡大が貧しい国々の食糧安全保障を脅かすという恐れが現実のものとなりつつある。