ロシア政府 小麦輸出禁止を考える 国内パン価格高騰とインフレ昂進を恐れる

農業情報研究所(WAPIC)

07.9.3

  既に高い小麦価格が供給減少でさらに高騰することを恐れるロシアが穀物輸出の禁止を考えている。フィナンシャル・タイムズ紙によると、今や世界第5の小麦輸出国となったロシアは、12月の議会選挙を前にパンの価格上昇とインフレ昂進を恐れている。穀物貿易業者の見るところでは、ロシア政府は、外国への販売を抑えるために、小麦輸出の部分禁止か、禁止的な輸出税の導入を考えており、9月の最初の2週間のうちに決定が下るだろう。

 ロシア政府の懸念は、他の食料輸出国が自国内での価格高騰を抑えるために外国への販売を抑えようと試みていることから来る。例えば、やはり世界第6の小麦輸出国・ウクライナは6月に輸出税を導入した。世界最大のパーム・オイル(椰子油)輸出国・インドネシアは先週、国内価格高騰を抑えるためにその原油 (CPO)輸出税を10%に引き上げた[これは不正確な言い方だ。インドネシア政府は、CPOの国際・米国価格のレベルに応じて、トン当たり5%、7.5%、10%の輸出税を計画しているが、今日9月3日、輸出税を6.5%から7.5%に引き上げたばかりだ]

 ヨーロッパの貿易業者は、輸出税で利益を奪われるロシア輸出業者が新規輸出契約を避けるから、輸出税論議はロシアの外国販売を抑えることになろうと言う。また、ロシアの輸出禁止論議は、エジプト、インドなどの食料輸入国をパニック買いにも走らせているということだ。

 Moscow considers wheat export ban,FT.com,9.2
 http://www.ft.com/cms/s/0/9cc469a6-597a-11dc-aef5-0000779fd2ac.html

 先々週末から先週初めにかけ、カナダの干ばつによる減産予測やインドの新たな輸入入札実施の発表を受け、シカゴやロンドン、パリなどの欧米商品市場の小麦先物価格は記録的な高騰を示した。先週末には、エジプトの輸入継続に加え、韓国や台湾が新たな輸入入札を発表したことから、欧米市場の小麦先物相場は、さらに一段駆け上がった。シカゴ市場では1ブッシェルあたり8ドルに近づいた。前年平均のほぼ2倍だ。LIFFE(ロンドン国際金融先物取引所)パリの 製粉小麦の11月ものは同市場開設以来の最高値に跳ね上がった。

 それもこれも、とりわけ新興国の堅調な需要にもかかわらず、中国、インド、米国、フランス、カナダ、オーストラリアなど主要生産国の生産は低迷、在庫は26年来の低さに落ち込んでいるからだ。そのうえ、オーストリア、EU、カナダは今年も厳しい干ばつに襲われている。主要生産国の生産低迷を辛うじて埋め合わせてきたのが、ソ連崩壊による落ち込みから復活したロシア、ウクライナだが、この両国も頼りにならないことがはっきりしてきた。まさに、”世界を誰が養う?”。 

 FAOSTATのデータにより作製。