生物多様性が草地の収量を高める ヨーロッパの大規模実験

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.3

  ヨーロッパの大学・研究機関による大掛かりな実験で、栽培する草の種類が増えれば草地の収量が増え、雑草も減ることが明らかにされた。草の種類を増やすことで高収量が得られるのに、動物飼料としての草を栽培する農業者はどうして一つか二つの種類の草しか栽培しないのか、モノカルチャーに走るのか、疑問が生じる。

 最近のヨーロッパ生物多様性科学者会合でこの結果を発表したアイルランド農業食料開発庁(Teagasc)環境研究センターの生態学者・ジョン・フィン氏は、これを農業者に伝えたければ、彼らの言葉で話さねばならないと語ったという。欧州委員会の最新の報道発表が伝えている。

  Research: Increased biodiversity leads to higher yields for farmers,European Commission,07.11.2

  この研究プロジェクトはヨーロッパ科学財団(ESF)が調整、20以上のヨーロッパ諸国がかかわった。実験はかつてない大規模なもので、ESFのEuroDIVERSITY Programme.傘下の26の大学・研究機関の科学者により行われた。28の実験サイトは極北から暑く・乾燥した南部まで、ヨーロッパ中に分布する。

 それぞれのサイトの実験圃場では、各地の農業者に馴染みのある4種の草が様々な組み合わせで栽培された。圃場は農場と同じ方法で管理され、施肥され、機械で収穫された。収量は、科学者が通常使う単位であるトン/ヘクタールで計算された。

 結果は、平均して、1種の代わりに4種を栽培するときには収量が3.5トン多くなり、雑草も減ることを示している。大部分のサイトで、ミックス種栽培からの収量は、最も生産力の高い種のモノカルチャーからの収量を超えた。最も効果的なミックスは、4種それぞれを等量栽培するミックスであることも判明した。

 フィン氏は、”ヨーロッパの大きな面積が集約的な草地で覆われている”が、これらの草地が4種の草で覆われることになれば野生動物への恩恵もあると言う。研究は草種の豊かな草地では昆虫が増えることを示した。これは、巡って昆虫を食べる野鳥や小哺乳動物を引きつけることになるという。