欧州委員会、ブロイラー保護指令案を採択 最大飼育密度は30 kg/m2

 農業情報研究所(WAPIC)

05.6.1

 欧州委員会が31日、ブロイラー保護に関する指令案を採択した。ブロイラーの集約飼育における深刻な健康・福祉上の欠陥を明らかにする科学的証拠に鑑み、またEU諸国と市民の長期にわたる要請に応えるものという。現在、ブロイラーに特定した動物福祉に関するEU立法はない。各国の法令や基準に加え、農場動物の福祉に関する指令(98/58/EC)の一般的要件が適用されてきた。この特定分野に適用される指令案が初めて提案されたことになる(Commission proposes legislation to improve welfare of broiler chickens )。

 提案は1平方メートル当たり30s(30 kg/m2)の最大限飼育密度や、動物福祉を確保するための多くの最小限条件を設定する。農業者は、寝藁、飲み水、飼料への適切なアクセスや通風を確保せねばならない。建物は一定の明るさを持ち、最低限1日2回の見回りをせねばならない。怪我をしたり、健康状態が良くない鶏は治療するか、即座に殺処分せねばならない。そして、鶏舎の気温、行った治療、死亡率などに関する詳細な記録の保存も義務付けられる。ただし、30 kg/m2最大限飼育密度は、強化された福祉条件を満たす農場では、と殺場での検査が特別な福祉問題がないと証明しつづけるかかぎり、38 kg/m2 にまで引き上げることを許される。

 提案された動物福祉の要件は、EU全体で適用される共通の最低限のルールを創出することでブロイラー貿易に透明性をもたらし、動物福祉を監視するためのチェックは、生産者と検査官の追加負担を最小限にするために、既存の獣医コントロールに統合されるという。提案は、指令の基準の順守に基づく義務的表示に関しても、欧州委員会が2年以内に報告することを要請している。

 わが国では、「動物福祉」が「動物愛護」と訳される場合が多く、動物を偏愛する一部の人々が唱導する倫理にかかわる観念や運動と受け取る傾向が見られる。しかし、それは、我々の食べ物の品質や安全性、環境に直結する問題でもある。過度に集約的な畜産は動物の健康を害し、抗生剤等薬剤の多用によって薬剤耐性菌を増やし、適切に処理できない大量の畜産廃棄物や汚染物質の集中的排出によって、水・土壌・大気を汚染する。ヨーロッパの消費者の動物福祉への関心が高いのはそのためでもある。

 マルコス・キプリアノウ保健・消費者保護担当委員は、指令案採択の発表に当たり、「動物福祉は倫理にかかわるだけではない。消費者の品質の問題でもある。毎年と殺される鶏の数は、EUにおける他のいかなる家畜部門よりも多い。この部門における集約農業方法は重大な福祉問題を引き起こしてきたし、消費者は鶏の福祉に関する懸念を繰り返し表明してきた」と語った。提案は、動物のための具体的改善を確保するとともに、農業者が福祉基準を満たすかぎり、農業方法の一定の柔軟性を許容するものだという。

 提案は、協議の過程で動物保護団体、消費者団体、産業に歓迎されたとされている。今後、閣僚理事会と欧州議会の審議に付されることになる。