ドイツ 蜜蜂がGM作物・モノカルチャー・農薬を逃れて都市に避難

  農業情報研究所(WAPIC)

08.8.25

 7月15日、ドイツの6人の養蜂家が3万匹の蜜蜂をミュンヘン市内に移住させた。ミュンヘンから80kmほど離れた彼らのカイスハイム村近くの遺伝子組み換え(GM)トウモロコシから蜂を守るためだ。また、モノカルチャー化で春が過ぎると村近辺で花を咲かせる植物は(トウモロコシのほか)なくなってしまうことからくる蜂の飢え死にや、農薬中毒死を防ぐ意味もある。市内はこういう問題とは無縁で、夏には緑地もいっぱいある。今や、市内は蜜蜂にとって最高の夏の避難地になっている。

 ドイツだけでなく、世界中で蜜蜂が大量死するようになっている。授粉を媒介する蜜蜂がいなくなれば、大半の作物は実らない。蜂がいなくなれば受粉もなくなり・・・人類もいなくなる(アインシュタイン)。地球から蜂が消えれば、人類は4年も生きられないだろう。今や、都市だけが蜜蜂の、従って人類の救世主 になるのだろうか。

 ENVIRONMENT-GERMANY: Fleeing Famine, Bees Seek Asylum in Cities,IPS,08.8.14
  http://ipsnews.net/news.asp?idnews=43557

  蜜蜂を移住させた養蜂家の一人は、蜂がGMトウモロコシに触れば蜂蜜も汚染され、売れなくなってしまうと言う。ドイツでは、一定のGM作物栽培は合法だが、人間消費用の収穫は禁止されている。彼は今年初め、何人かの仲間と一緒にGM作物反対をアウブスブルクの裁判所に訴えた。しかし、裁判所は5月、これは合法だから、蜂の巣をどこか別の場所に移すべきは養蜂家の方だと判決した。彼は、9割の蜜蜂の行動半径は3km以内だが10km飛んでも何の問題もなく、ミュンヘン市が蜜蜂の避難地をくれたのは何よりもの幸いと言う。

 蜜蜂は夏が終わるまでミュンヘンにとどまる。8月半ばにはトウモロコシの開花期が終わり、蜜蜂は家に帰る。こういう試みはドイツ全体に広がっているが、ベルリン周辺のブランデンブルクなど一部地域ではGM作物が至るところにあり、蜜蜂が逃れるのはほとんど不可能という。

 蜜蜂を脅かしているのはGM作物だけではない。モノカルチャーの導入や殺虫剤の大量使用が蜜蜂の都市への避難を余儀なくさせている。

 モノカルチャーは蜜蜂の自然生息地を奪う。春のうちはまだいいが、年の後半に咲く花はほとんどなくなり、蜜蜂は飢えに脅かされる。衛星画像で見ると、広大な地域、特に国の東部では、蜂を養うものが何もない。

 その上、モノカルチャーは大量の農薬、殺虫剤の使用を伴う。これは蜜蜂には致命的だ。今年5月、バーデン・ヴュルテンベルク州の養蜂家が何十万もの蜜蜂の死を報告した。彼らは、トウモロコシ種子を害虫から守る殺虫剤であるポンチョ・プロの成分のクロチアニジンが犯人と主張した。大量死直後の分析で、蜜蜂の体内から大量のクロチアニジンが検出されたからだ。

 州の700人を越える養蜂家が告訴し、この農薬の製造者であるバイエル・クロップ・サイエンスもポンチョ・プロが蜂の死因と認めたが、これは化学物質誤用が引き起こしたものだと種子生産者を 非難しただけだった。

 こうして、今や蜜蜂にとって、都市生活の方が魅力的になった。レクレーション緑地や中庭には、早春から夏の終わりまで、数ヵ月の間花を咲かせる溢れんばかりの様々な植物がある。町の中で、蜜蜂は、公共庭園からバルコニーや中庭まで、せいぜい200mほどを飛ぶだけで、大部分は殺虫剤のかかっていない香りのいい花を見つけることができる。

 2007年、ドイツでは蜜蜂総数の30%に相当する蜜蜂が死んだ。550の野生種のうち、330種が絶滅危惧種のリストに載っている。同様な蜜蜂大量死は他の国でも起きており、特に米国では、2007年、24州で、蜜蜂総数の70%が死んでいる。

 なお、ガーディアン紙によると、イギリスでもこの冬から春にかけて、全巣箱の3分の1が生き残れなかった。通常、この数字は5%から10%の間という。

 Honeybee deaths reaching crisis point,The Guardian,8.13
 http://www.guardian.co.uk/environment/2008/aug/12/conservation.wildlife1