全農 配合飼料価格引き下げへ 誰も喜べないトウモロコシ価格の下落

農業情報研究所(WAPIC)

07.9.21

  JA全農が20日、07年10-12月期の配合飼料供給価格を、全国全畜種平均で、前期比、1トンあたり約400円値下げすると発表した。昨年(06年)7-9月期以来の5四半期ぶりの値下げだ。海上運賃、糟糠類などの値上がりがあるものの、円高、とうもろこしシカゴ定期の下落で引き下げ余地が生じたためという。

 平成19年10〜12月期の配合飼料供給価格について(全国農業協同組合連合会、09年9月20日)

 昨年10-12月期以来の連続4期の値上げは累積で11,500円に達していたから、たった400円の値下げでは飼料高の大勢には何の変化もない。天井知らずの値上げを恐れてきた畜産農家はホット一息というところかもしれないが、それもいつまで続くか不透明だ。値下げの主要因の一つとなったトウロコシ価格の下落がいつまでも続くとは限らない。

 トウモロコシ価格の下落は、小麦、とりわけ大豆価格の高騰という犠牲を払うことなくしては実現できなかったものだから、消費者にとっても何の利益もない。そのうえ、米国におけるトウモロコシ増産のための大豆との輪作体系の崩壊は、窒素肥料多投=水系富栄養化による環境破壊をますます深刻化させている(How Corn Ethanol Could Pollute the Bay,The Washington Post,8.26)。畜産農家も、消費者も、環境破壊を恐れる人々も、トウモロコシ価格下落を喜ぶわけには決していかない。

 小麦にしても、大豆にしても、増加する一方の世界需要に世界の供給が追いつかないという世界市場の構造が定着してしまった。昨年秋以来のその国際価格の急騰はとどまるところをしらない。9月4日に遂に1ブッシェル・8ドルを超えたシカゴ商品取引所の小麦先物(期近)相場は、なお8ドル50セント前後に張り付いたままだ。9月10日に1ブッシェル・9ドルを超えた大豆はその後も急伸、昨日(20日)は9.885ドルと10ドルに限りなく接近した。

 これは、改めてトウモロコシの飼料用需要も呼び起こす。大豆を犠牲にし、環境を犠牲にしたトウモロコシの増産も追いつかない。全農が「現在330セント/ブッシェル(9月限)前後で推移している」というそのシカゴ取引所価格も、今週初め、6月半ば以来初めて1ブッシェル・3.5ドルを超え、昨日(20日)の3.7ドルまで、連日の上昇を続けている。

 明るい見通しなど、誰にも立たない。