農業情報研究所


タイ:政府に土地紛争解決の要請、進まぬ農地改革

農業情報研究所(WAPIC)

02.5.8

 7月3日の「バンコク・ポスト」紙が伝えるところによると(Office admits failure ,Bangkok Post ,7.3)、タイ農地改革事務所(Alro)が土地無し農民に土地を与える土地改革計画が富裕な地主の抵抗で失敗に帰していることを認めた。その年次報告によれば、昨財政年度に出された土地改革文書(暫定的耕作権を与える「ソー・ポー・コー証書」)は6万1000で、25万という目標の25%にすぎない。八つの県では、一件の配分もなかった。土地を不法に占拠し、利用することなく放置している土地所有者からの収容に失敗したとされている。農地を不法に占拠する所有者への罰則強化が必要という声も出ている。

 1975年農地改革法による農地改革は、土地の確認と受領者の審査が障害となってきたし、土地への完全な権利を要求する農民にかかわる未決着の問題もある。ほぼ30年をかけて計画の3分の1の面積の土地が122万の農民に配分されただけである。土地無し農民が遊休地を耕作することによる紛争も後を絶たないようだ。4月、閣議は、紛争地に住む農民の逮捕を許す決定を行なった。しかし、これで問題が解決されるわけでないことは明らかだ。

 先月、ランプーンの200人の土地無し農民がチェンマイ県庁に押しかけ、土地利用問題の解決と遊休私有地を耕作する農民の相次ぐ逮捕の停止を要求した(Poor farmers want minister to solve land use problemes,Bangkok Post ,6.4)。このとき、既に20人が逮捕されており(うち3人のみ釈放)、警察はさらに200人を逮捕しようとしていると伝えられている。抗議者は、特に、土地を購入した後に遊ばせている4つの企業の土地取得の調査を要求した。

 このような状況に、173の市民グループが、「政府は警察と役人が作物を破壊し、農民の財産を燃やし、彼らの個人的自由を侵犯するに任せている。5万から15万バーツの保釈金を要求された彼らを救済する方法はない」と抗議を始めた(Civic groups protest over 'police violence',Bangkok Post ,6.29 )。今月は、学界も救援に乗り出し(Academics to offer bail for `encroachers' ,Bangkok Post ,7.5)、首相は漸く逮捕を止めさせると約束した(PM pledges end to arrests of farmers,Bangkok Post ,7.8)。上院議員は、「これは政策の問題であり、平和的解決に達するためには政策レベルでの扱いが必要だ」と、政府に土地紛争を終わらせるように要求している。

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